フラワー・ストーリー‐本編 access_time

フラワー・ストーリー 第10章

 めぐみと出発してから5日目。
 私たちは、めぐみが仲間に加わってくれた事を心底嬉しく思っていた。
 めぐみのおかげで、地底地図では2週間かかると書いてある距離を5日で進んでいたからだ。
「地底通路で、あたしに不可能はないよ。ただ、こっからは普通の通路を通るから、地球人と会うと思う。それなりに覚悟しててね」
 その言葉で、私は身を固くした。
 私は、今まで本当の戦いをした事はない。
 さそりも竜も、私はほとんど何もしていなくて、幸運で生き延びたに過ぎない。
 街で地球人と戦う時も、子どもだからと、戦いの場からは遠ざけられていた。
 美羽もそれなりに経験はあるみたいだけど、やはり不慣れには違いない。
「大丈夫よ。あたしは絶対に負けないから」
 めぐみのその自信がどこから来るのか、聞いてみたい。
 まあ、それでどうにかなるものでもないので、覚悟を決めていよいよ本通路に入っていった。
 1日目は何事も無く通路を進んでいけた。
「これなら、大丈夫そうだね」
 そういって、私たちは適当な穴に入って寝袋にくるまった。

 次の日も、順調に進んでいた。
 私たちもだんだんお互いの事がわかるようになっていたので、話しながら先を急いでいた。
 ところが……。
「静かにして!」
 突然めぐみが緊迫した声で囁いた。
「誰か来る……あの穴に隠れて!」
 私たちは近くにある手ごろな穴に身を潜めた。
「──にしても、あの逃げ出したやつ、本当にむかつくよな」
 それは、地球人の兵士だった。
 それも、聞き覚えのある声。
 そう、私をころそうとした三人組だ!
「女にやられるし、格下げされるし、本当最悪だよ」
「アーチ人のくせに、生意気だよな」
「ああ。あんなやつ、今頃天罰が下ってるよ」
 その言葉を聞いて、私はふつふつと怒りがこみ上げてきた。
 アーチ人からアーチを奪ったのは地球人だ。
 なのに何で、アーチ人が悪いみたいに言われなければいけないんだろう。
 悪いのは地球人。
 アーチ人に、罪はないはずだ。
 そう思うと、私は自分で自分を抑えきれなくなり、兵士たちの前に飛び出して、ナイフを投げつけた。
 兵士は咄嗟の事で避けられず、それをまともに食らった。
 とはいえ、怒りで手元が狂い急所は外してしまったので、兵士は腕から血が出ただけで、命には関わらなかった。
「こいつ、あの時の!」
 そういって、兵士の一人が銃を構えた。
 引き金を引こうとしたその時、めぐみが穴から飛び出して、そのままとび蹴りを食らわせた。
 兵士は倒れたが、無傷の兵士はもう一人いる。
 私は助けに入ろうとしたが、めぐみが戦っていた。
 めぐみは強く、かなり優勢だ。
 美羽は懸命に腕を切られた兵士と剣で戦っているが、押され気味だ。
 どうしようか迷っていると、蹴られた兵士が起き上がり、襲ってきた。
 私は剣を持つその兵士を瞬時にかわし、後ろからナイフを突き刺した。
 見ると、めぐみはすでに自分の相手を殺し、美羽を助けている。
 やがて、その兵士も2対1で倒れ、私たちはその、命を賭けた戦いに勝利した事を悟った。
「この、ばか」
 めぐみが私を見て最初に呟いたのは、そんな言葉だった。
「何でわざわざ戦いに出るのよ。隠れてれば、見つからなかったのに……」
「まあまあ、勝てたんだから気にしない方がいいよ」
 美羽が言った。
「でも、あんたたち二人だったら、間違いなく死んでたよ」
 めぐみの言葉は、事実だった。
 3人中、2人はめぐみが倒した。
 あとの1人も、不意打ちで弱っていたので、普通に考えれば簡単に倒せる。
 つまり、事実上私と美羽は何もできなかったのだ。
「あたしは、あんたたちとずっと一緒にいる事はできないけど──」
「え!?」
 美羽が驚きの声を上げた。
「あたしは、いつまでも伝説にすがろうと思わないの。今は方向も目的も同じだから助けてあげてるけど、地底の湖を抜けたら、後は別行動ね」
 私は、めぐみがずっと一緒に旅をしてくれると思っていたので、それにはショックを受けた。
 でも、いつまでもめぐみに頼れない。
 私も美羽も、心の底ではわかっていたはずだ。
 それに、地底の湖を抜けるまでは一緒にいられるのだ。
 それまでは、先のことは考えないようにしようと私は決めた。
 だって、地底の湖に辿り着けるかどうかも、怪しいんだし……。

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