フラワー・ストーリー 第11章
私たちは、その日は少し早めに寝る事にした。
戦いで精神的に疲れていたからだ。
私たちは、地球人から隠れるために使ったあの穴で、そのまま寝る事にした。
どっちにしろ、洞窟内では、時間がわからないし……。
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私は、夜中に突然目が覚めた。
無意識のうちに辺りを見回すと、めぐみがおきているのが少し見えた。
「……めぐみ?何やってるの?」
「ああ、真衣。見てわかんない?見張りよ」
「でも、昨日は寝たわよね?おとといは?本通路に入る前くらいは……」
「……正直に言おうか?出発してから一睡もしてない」
私は唖然としてしまった。
「言ってくれれば、交代したのに──」
「あたし、まだ完全にあんたたちを信用してないんだ」
めぐみは私の言葉を遮ってそういった。
「何で?もしかして、あなたの過去が……」
私はその言葉を最後まで言えなかった。
しかし、めぐみはその言葉の意味をしっかりと理解しているようだった。
「……ごめん、それはまだ話せない……。でも、もしかしたら、あんたなら、信じられるかもしれない。
何でかはわかんないけど、あんたとは目的も同じだし、年齢も、過去の体験も似てる。だからかな、少しは気を許せた。
それでも、やっぱり……話せない……」
その気持ちを、私は痛いほどわかった。
私が美羽と仲良くなったのも、美羽が夢人と仲間になったのも、すべて同じ。
過去の体験の共有。
でも、それでも。
どうしても話せない、それほどまでに苦痛な体験をめぐみはしたのだろう。
それを無理に話させるのは、ただ傷を広げる事にしかならないだろうから。
「……その気持ち、よくわかるわ。別に、話したくないならそれでもいい。
でも、私たちの事は、信用してくれない?
過去にどんな事があったかは知らない。
私たちの過去はみんな違う。
私の過去も、美羽の過去も、めぐみの過去も、みんな違って、みんなつらいと思う。
めぐみの過去が一番つらいかもしれない。
孤独だったかもしれない。
でも…………」
そこで私は一旦言葉を切り、やがて微笑んでこういった。
「今は、独りじゃないでしょ?」
その言葉を聞いて、めぐみも微笑んだ。
「そうよね……独りじゃ……ない……よ……ね…………」
めぐみは、微笑みを保ったまま、ふらついて、倒れた。
私はめぐみを急いで支えた。
めぐみは、寝ていた。
私はふっと微笑むと、私が今まで使っていた寝袋の中にめぐみを入れてあげた。
そして、そのまま私は、一睡もしなかった。
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次の日、めぐみはかなり早く起き出した。
「あれ?あたし、何で寝てるの?」
「えーと……私と話している途中で、寝ちゃったから、寝袋に入れてあげたの」
「でも、見張りは!?」
「大丈夫。私がしたから」
「ええ!?でも、眠くないの!?」
「めぐみが言える事じゃないでしょ?明日から、3人で交代でやりましょう」
本当は、めぐみが今までずっとやっていたのだから、美羽と2人で交代すべきなんだけど、正直それだと私の体が持たない……。
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それから1時間後、ようやく美羽がおきたので、皆で食事を取ってから出発した。
「今日は少し急いで行きましょう。地底の湖はもうすぐよ」
めぐみがそういったので、私は必死に睡魔と戦いながら足を速めた。
あそこを出発して10時間ほど経っただろうか。
少し気が緩んできた時、先頭を行くめぐみが突然立ち止まった。
「どうしたの?」
「静かに。──誰か来る」
この地下通路で会う人の、99.9%は敵だ。
めぐみにはそう言われていた。
よおく目を凝らしてみると、近づいていたのは5人のアーチの兵士だった。
「戦うしか、ない?」
私はめぐみに問いかけた。
「ここでは隠れられる場所が無いしね……とりあえず、まずあたしが突撃してかく乱させるから、二人は後から入ってきて」
めぐみはそういって、兵士たちの元へと駆け出した。