真っ白なしずく access_time

真っ白なしずく #2

 半径1メートルほどのつむじ風が突然現れた。  私は少し離れたところにいたので、私を隠す葉が吹き飛ぶ事はなかったが、二人の男たちの周りの葉はすごい勢いで上へ吹き飛ばされた。  しかし、銀マントの方は驚きもせず、杖をちょいっと動かした。  すると、真っ黒な矢が杖の先から発射され、つむじ風の中心を射抜いた。  つむじ風は、それこそ雲散霧消という四字熟語がぴったりなくらいに、ぱっと消えた。 「ディアナの象徴魔術か……」 「『陰の矢』だ。こんな小手調べの魔法で打ち消せるとは思ってもみなかったぞ。  ……この程度か? メルクリウスの力は」 「馬鹿にするな」  青マントが杖を大きく振った。 「うわわっ!?」  さっきのとは比べ物にならないような規模のつむじ風。  小規模な竜巻とでも呼ぶべき勢いで、今度は私の隠れている場所までその風が届いた。  まるで磁石に吸い寄せられるかのように男たちの方へ吹き飛んでいく私だったが、それに男たちが気づく前に金マントが行動を起こした。  一瞬で姿を消したのだ。 「!?」  青マントも驚きを隠せない。  と、次の瞬間、まるで地面から出てくるみたいに金マントは青マントの背後に現れた。 「甘いな」 「……ッ!?」  金マントは青マントの背中を思いっきり押した。  青マントの押された方向には、さっき巻き起こった竜巻がある! 「うわァアああああ!」  自ら作った竜巻に巻き込まれ、青マントは空高く吹き上げられた。  その真下に私が強制的に吸い寄せられていく。  この訳のわからない勝負の只中に入ったら即死するような気がするなぁ、とかぼんやりと考えていたが、私は実際に今、巻き込まれかかっている。  つまり、即死しそうだった。 「きゃぁあああああ!」  私は絶叫した。  その時、私の真上に吹き上げられていた青マントは、ポロッと何かを落とした。  それは、マントたちが持ってるのと同じ、杖だった。  ただし色は真っ白だ。  私は深く考えずに、反射的に落ちてくるそれを手に取った。    何も起きなかった。    私は手に取った途端にその杖が光りだすとか、爆発するとか、そういった魔法的なイベントを想像していたので、これにはちょっとガッカリだった。 「痛っ!」  ──ガッカリした直後にガン!! と地面に墜落した。  青マントが何とか竜巻を抑えるのに成功したらしい。  あたりを少し見回したが、肝心の金マントはいない。いつの間にか消えていた。  ワンテンポ遅れて青マントが落ちてきた。 「ぐはっ!」  地面に激突して、そのままピクリとも動かなくなった。 「…………あのー、大丈夫ですか?」  へんじがない。ただのしかばねのようだ。 「……私は別に死んでいないぞ」  前言撤回。何とか生きているらしかった。  というか、私としても答えてほしい疑問が無数にあるので、死んでもらうとすごく困る。 「よかったです。  ところで──」 「ん!?」  突然青マントが目を見開き、私の言葉を遮った。  その視線の先には……、私の握っている杖があった。 「あ、この杖ですか?  すいません、さっきあなたが落としたものをキャッチして……」 「……貴様」  青マントは低い声で私の言葉を遮る。 「はいっ!?」  あまりに恐ろしい声のトーンで、私は反射的に返事をした。 「貴様は……どこの魔法学会(アカデミー)に所属しているのだ?」 「……はい?」  アカデミー?  そんな事言われても、何の事か、さっぱりわからない。 「すいませんが……何の話をしてるんですか?」 「とぼけるな!」  私は一喝された。理不尽だ。 「この杖が変色せず、崩壊もしていない。つまり、お前は別の杖の保持者なのであろう」  何を言っているのか、全く理解できない……。  ──できないので、正直に言う事にした。 「すみません。  私はあなたの話がこれっぽっちも理解できません」 「……本当か?」  疑いの目を向けてくる青マント。 「本当です」  としか答えようがなかった。 「それよりも、まず、この状況を説明してもらえませんか?  ……あなたから、私に」  質問をしたいのは、むしろこっちの方なのだ。

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