真っ白なしずく access_time

真っ白なしずく #5

「え?」 「ちょっと用事があるのよ。説明は後でするわ」 「はぁ……」  と言われても。  あまりに説明が途中で、しかも脇道にそれたままぶった切られたので、逆にどうでもよくなった。  マリ○カートでコースアウトしてジュ○ムに吊り上げられた瞬間にDSが電池切れしたようなものだ。もはや諦めがつく。 「というわけで、行くわよ」  いつの間にか私の背後に回っていた仙道さんが言った。 「……って、どこへですか?」 「メルクリウス魔法学会(アカデミー)の本部よ」  さらりと答える仙道さん。 「……誰が?」 「あなた」 「いや、何で突然ヒューマノイド・インターフェースみたいな喋り方に……」 「ちなみに拒否権はないから」 「ないんですか!?」 「ほら、早く行くわよ」 「……でも、私、そろそろ帰らないと……」  そうなのだ。  展開が早すぎてたぶんみんな忘れているが、一応まだ下校中。  未だに着ているのは学校の制服だし、帰らないとお母さんに心配されるだろう。 「──そう。わかったわ」  仙道さんは意外とすんなり折れた。 「でも……、あなたは興味ないのかしら?  なぜ私たちが魔法を使えるのか。  本部に行けば、もっとたくさんの魔法も見られるわよ」 「…………。  でも、やっぱり、帰らなきゃ──」  ものすごく気になるけど! 「あ。そういえば、雫ちゃん、愛と美の女神『ヴィーナス』って知ってるわよね?」 「ええ、まぁ……」  さすがにそれは知っている。 「ヴィーナス……というのは英語読みで、私たちはウェヌスと呼んでいるんだけど。  この女神は、ギリシャ神話のアプロディーテー(ΑΦΡΟΔΙΤΗ)と同一視されていて、その語源は『アプロス(aphros)』。  これはギリシャ語で『泡』を意味するの」 「はぁ……」  突然何を言っているのだろうか? 「何でだと思う?」  訊かれたけど、全くわからない。  愛と美と泡に関係があるとは到底思えないし……。 「わかりません……」 「そうよね。  実は、ヴィーナスには、とんでもない誕生の秘密が隠されているのよ。  これ聞いたら、たぶん、ヴィーナスを愛と美の女神とか言ってる人を見るたびに、魂をこめて鼻で笑いたくなるわよ」 「そんなに!? 嘲笑の域を超えてるッ!!」  そう言われると、すごく気になる。 「一体どんな秘密が……!?」 「それはね……」  私はわくわくしながら仙道さんに注目していた。が、 「……………………、あ、あなたはそろそろ帰らないといけないのよね」 「えぇえええええええええええ!? 何そのもったいぶり方!」 「ほら、家まで送ってあげるわよ。  本部に行くならその道中で聞かせてあげようと思ったんだけど……残念だわ」 「別に時間のかかる話でもないでしょう!」 「いや、かかるのよ。ウラノスとサトゥルヌスの話もしないといけないし」 「意味はわかんないけど酷い!」 「世界の誕生の話からしないといけないから、時間かかるのよ?」 「これ以上興味持たせることを言うなー!!」 「さあ、早く帰らないとお母さんが心配しなさるわよ?」 「ぐっ……」  言葉に詰まって、しばし考える。  もともと、行きたいなあっていう気持ちが4割8分くらいだった。  どちらかといえば帰った方がいいなあというくらいで、できる事なら行きたい。  でも、やっぱり……。  悩んでいるところで、仙道さんは魔法の呪文(あくまのささやき)を使った。 「あ、そうそう。  場合によってはだけど……。  ……あなたのお母さんの記憶を改ざんする事もできるわ」 「……………………。よろしくお願いします」  こうして、私のメルクリウス魔法学会本部行きが決定した。

真っ白なしずく #5 への{{comments_list.length}}件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

真っ白なしずく カテゴリーの最新記事