ユニバース・アドベンチャー ★30
★30 Party of The Larmia
「……では、これよりラーミア創立410周年記念のパーティーを行います。
なお、男性の方は夜10時までにお帰りください。
明日の朝3時までパーティーは行われるので、女性の方はそれからも参加する事ができます。
では、皆さん、ごゆっくりお楽しみください」
司会の人がそう宣言すると、会場のあちこちから歓声が上がった。
このパーティーは3部に分かれていて、第1部は長々とした祝辞とかが読まれる式典、第2部が男女ともに楽しむパーティー、第3部が女性だけのパーティーになっているらしい。
だいたいの人は第2部から出席するけど、第1部から出ている人はかなり退屈していたので、第2部の始まりを待ちわびていた。
「……で?おれは何をしてればいいんだ?」
ヒカルが不機嫌そうに言った。
ちなみにヒカルとセインはさっきの服装のままだけど、あたしたち女性陣4人もスカートやワンピースのような華やかな服装に着替えている。
「別に、どこに行ってても大丈夫ですよ。
あ、それから、自分称だけは私に直しておいてください。
口調はそのままでもツンデレっぽくて不自然ではありませんが、自分称くらいは直さないとおかしいですから。
……セインもですよ☆」
「……ツンデレって……できれば避けたいんだが……。
どうすればいいんだ?」
「そうですね~。
だったら敬語はどうですか?
女言葉はさすがに抵抗があるでしょうから……」
リアが提案した。
「わかった……じゃなくて、わかりました」
「そんな感じですよ☆」
リアが拍手した。
ヒカルが席を離れると、カナがあたしの肩を小突いた。
「ねえ……つけてみない?」
「え!?どうして?」
「……だって、なんだか面白そうじゃない?
ヒカルの事だから、絶対愉快な事件に巻き込まれるって」
本人にとっては愉快どころか超絶に不快なのだろうが、確かに一理あったので、あたしとカナはヒカルをつけることにした。
「……くそっ……なんでこんな格好を……」
ヒカルは歩きながら毒づいていた。
もちろん、誰にも気づかれないような小さな声だったけど。
「全く……別にこんなところ来なくてもいいのに……いたっ!」
俯いて早足になっていたヒカルは、誰かとぶつかってしまった。
「あ……すみません……」
そういってヒカルは足早に立ち去ろうとしたが、その人はヒカルの肩をがっしりつかんで目の前に引き戻した。
「あなた……お名前は?」
その人は、10代後半の男の人だった。
「……ヒカルですけど……」
ヒカルはとてつもなく不安そうな顔をしていた。
おそらく、これからの展開が読めているのだろう。
「どうかしたんですか?」
「……あなた、恋人とかいます?」
「!!」
ヒカルは目を見開いた。
「さっきぶつかった時に思ったんです。
この瞬間に出会ったのは運命。英語で言うとデスティニー。ですから僕、あなたの事が……」
「……やめてください……」
ヒカルは必死に逃げようとしたが、慣れない服装のため思うように動けない。
「……お願いです!
今夜9時から行われるメインイベントのダンスパーティーで、一緒に踊っていただけませんか?」
「……え……えーと……」
絶対嫌です。ヒカルはそう言うのを必死にこらえていた。
「……あ、私、用事があるのでこれで……」
「何があるんですか?
終わるまで待ちます、ダンスには間に合わないんですか?」
「………」
その人からすれば好意なのだろうが、ヒカルからすれば果てしなく迷惑だ。
「あ、私……踊る相手が決まってるんです」
「……誰ですか?」
ヒカルは名案を思いついたと思ったのだろうが、その人は意外にしつこい性格のようだった。
「その方に比べて僕の何が劣っているんですか?
教えてください、できればその方に会わせてください!」
「………」
ヒカルはひたすら困っていた。