米津玄師”音楽隊”に行ってきました
タイトル通り。
2/12(金)、豊洲PITで行われた米津玄師ワンマンツアー「音楽隊」FINALに行ってきました。
この日を選んだ理由は単純で、Bremenのアルバム先行で抽選に参加した際、「追加公演かつ平日の金曜日の方が倍率低いだろう」と思ったからです。YANKEEの時に帰りの会外したトラウマがな……。
そんなわけで私にとって米津さんのライブは初体験でした。というかヒトリエ以外のライブ今まで行ったことなかった。
米津さんを直接見かけたことはdiorama発売記念トークイベントの時に一度だけ会ったのですが、それも4年前。歌も演奏も初めてでした。っていうかあれもバレンタインだったような気がする……。
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そういうわけで音楽隊。ええと、最高でした。
開演直後、幕に映し出される影絵の演出で期待感を高めたところで、『ウィルオウィスプ』で静かに幕を開けたライブは、
2曲目・アンビリーバーズでエンジンをかけていき、そこから『再上映』『フローライト』『ミラージュソング』と、Bremenの名曲たちを連発。
私が去年聴いた中で1番好きな曲『雨の街路に夜光蟲』では水玉模様のライトアップをしたりと、ビジュアル的な演出も完璧。『メトロノーム』では米津さん本人がピアノを弾き、(やや順番が前後しますが)『Undercover』の間奏ではドラムまで叩いていて、驚かされっぱなしでした。
Bremen以外の曲がどこで入ってくるかな……?と思っていたら、8曲目はおそらく代表曲となった『アイネクライネ』。照明のカラーを手描きPVと合わせる演出で感動。
MCで「速い曲をやる」と宣言して『ゴーゴー幽霊船』『パンダヒーロー』とハチ時代~Balloom時代の名曲。懐かしい……。
そしてBremenでも特にクールな『Undercover』『Neon Sign』、YANKEEの『ドーナツホール』と続き、最後は『ホープランド』『Blue Jasmine』で綺麗に〆。
アンコールでは曲の前に「Bremen」というアルバムの意味や想いについて10分ほど語った後、『Flowerwall』『こころにくだもの』で終わりました。
悔しかったのは、私がアルバムしか買ってないせいで『こころにくだもの』を聴いたことがなかった……。
『旅人電燈』も『ペトリコール』も買ってたのでよりによってこの曲だけ外していたという痛恨のミス。帰宅してすぐに購入しました。セットリスト作りたかったからな。
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今回のライブの何に感動したかというと、
まず、米津さんの成長が感じられたこと。……これだと何様だよって感じになりますが。
Balloomイベントの頃のハチさんは「つかみどころのない雰囲気」「他人を寄せ付けない空気」をまとっていた、というのが私の印象で、それ以降はインタビューや楽曲でしか知らなかったし、
ライブ慣れしていないことを理由にした『帰りの会』の会場の異常に小さいキャパや、その近辺でのインタビューでの発言などから、
もっと寡黙なMCを想像していたんですよね。
曲と曲の合間は最低限のことしか話さなくて、観客を煽ったりもせず、黙って曲をたくさん演奏する、という。
それは、ヒトリエ(wowakaさん)の方があまりMCをしないスタイルであった故の先入観、「ライブとはこういうもの」というイメージの狭さもあったと思うのですが。
そしてその予想は、完全に覆されました。
登場とともに上がる歓声に対して全く動じずに手を振り返し、メンバー紹介を行い、途中のMCでは「みんなついてこれるのかなぁ!?」と観客を煽り、前述のピアノやドラムなどのパフォーマンスを交える余裕もあり、ラストでは10分以上も話し続ける。
そういった1つ1つに、米津さんの、ここ1~2年でワンマンライブやフェスを繰り返したことで手に入れた実力と自信が明確に表れていて、
米津玄師が、単にハイセンスな作詞作曲を行うアーティストというだけでなく、3000人超の観客の視線を一手に引き受けることのできるパフォーマーになっていたことに気づかされ、感動しました。
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もう1つ、個人的に驚いたのは、米津さんのライブが、単に「踊って跳ねてノりまくる」というライブではなかったことと、それでも十分に楽しめるだけのパワーを感じられたことです。
最近(?)の邦楽ロックの主流が高速ダンスビートであるように、フェスでもなんでもとにかく「みんなでノって騒ぐ」という感じで、もう腕が千切れるくらいモッシュしなきゃファンじゃない!みたいなところあるじゃないですか。……ない?
まぁとにかく、私の中で「ライブといえばハイテンポな曲で飛び跳ねるのが醍醐味」というイメージがあったのですが。
(そういうライブを否定するわけではなく、そのイメージしかなかった、ということです)
今回のライブは『メトロノーム』『アイネクライネ』『Flowerwall』『Blue Jasmine』など静かに聴き入るような曲が多くて、むしろそちらがメインですらありました。
アンコール前ラストの『Blue Jasmine』なんて、(疲れてたのもあって)手さえ振ってないですからね。ただ聴いていたかった。私は最前よりちょっと後ろ、くらいのところにいたのですが、周りで私以外にも結構多くの人がそうしていました。
一方で『幽霊船』『パンダ』『ドーナツ』などのアップテンポなゾーンもあって、そこの緩急の付け方が見事だなあと。おかげで飽きることなく新鮮な気持ちでずっと聴き続けることができました。
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最後に1つ。ライブ中にふと思ったことがあって、
Bremenの曲を中心に演奏する中で、『ゴーゴー幽霊船』『パンダヒーロー』が演奏された時に、
「ああ、この人は確かに、5年前にニコニコ・ボカロシーンを制覇したハチさんなんだな」と。
私が最もボカロやニコニコにハマっていたのが、当時中3~高2だった2010~2012年で、(個人的な印象として)最も熱気があったボカロシーンを、まさしくハチさんやwowakaさんが全力で駆け抜けていった時期なんですよね。
作る曲が全てカッコよくて、その作詞作曲・プロデュースを1人でこなして、何万人ものファンの心を掴み、それでも同じ場所にとどまることなく、個性や武器はそのままでどんどん進化を遂げながらメジャーシーンに殴りこんでいく。
そういったハチ/米津玄師さん、wowakaさん/ヒトリエの姿に、高校生の頃の自分は感銘を受けて、憧れを抱いていて。
一昨日のライブは、そういった昔の気持ちを思い出させてくれた……というか、「この人は今でも自分の理想像、憧れの対象だ」と再認識させてくれた、という感じです。
いやwowakaさん今回のライブ直接関係ないんですけどね。でも私にとっては、やっぱりあの2人の凄まじいカリスマ性に衝撃を受けて育った身として、切り離して考えることが難しかったのです。そのことも考えさせられました。
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ライブの感想を読みにきた米津ファンがいないとも限らないので、そういう方には申し訳ないなと思いつつも個人的な話をするのですが、
私はここ1年ほど「ライブ楽しめない病気」にかかっていまして。
2014年夏のヒトリエワンマン『マネキンインザパーク』のあたりからずっと、「ライブという空間を楽しもうとする自分」への違和感というか、「せっかくのライブなのだから楽しまなくてはいけない、ノらなくてはいけない」という強迫観念への苦手意識が強くて、
その後の2015年初頭の『WONDER & WANDER』でもあまり楽しみ切れませんでした。
そして、それはバンドのライブもそうだし、アイドルのライブもそうで、やっぱり「当たり前のように空間に酔う人たち」と相容れることができず、周りとの温度差を感じて冷めてしまいました。
そのあたりの話は、ろこどるのライブやアイマスのライブの感想、あと個人的に書いたライブ論(?)の記事なんかを読んでいただけるとわかりやすいかと思います。
で、そういうことがあったので、今回のライブも、一応取ってみたものの、「やっぱり楽しめないんじゃないか」、「行ってみたらそんなに楽しくない2時間になってしまうんじゃないか」と思っていて、
でもその不安を完全に吹き飛ばしてくれたのです。米津さんは。
それは単に演奏だけではなくて、耳も目も釘付けになる視覚的演出、次に何が来るか読めない構成、そして何よりも、米津さんの本心から紡ぎ出される言葉。
そういった1つ1つが、確かに「来てよかった」と思えるだけの喜びを感じさせてくれたし、
さらに言えば、「一体感を押しつけられる感覚」が全くなかった。無理にこぶしを突き上げなくてもいいし、モッシュも起こらないし、聴き入るところではちゃんと聴くことができる。それだけでも2時間全く飽きずに聴いて、幸せになれる。
そういう場を成立させてしまう米津さんのカリスマ性と、それを支えるサポートメンバーやスタッフさんの力量、そして何よりも、米津さんの作る曲の持つ、人を魅了するパワー。
それを生で感じられたのはこの上ない至福だったし、私がここ1~2年抱いていた、「ステレオタイプ的なライブというものに対する苦手意識」を払拭してくれるだけの新鮮さを覚えました。
ええと、これは別にヒトリエのライブに不満があるというわけではなくて、
つまり、ああいう場はああいう場で大切だと思うんですよ。アイドルのライブにしろバンドのライブにしろ、曲を聴くため、パフォーマンスを見るために行ってるわけではなくて、「その場に酔うために行く」というか。それこそフェスなんかはその極地だと思うのですが、そういった「一体感を味わう場の提供」というのもライブの機能ではあって。
でも、ライブは、「その場限りであることによる補正」をかけなければ成立しないものなのか、と言われれば、そうではない。
ただ、演者のパフォーマンスを楽しんで、味わって、それだけで十分満足できるライブ。
そして、その「幸せを共有している人たち」がそこにたくさんいる。それだけで良くて、無理に一体感を覚えるアクションを起こすまでもなくて、それを一緒に体験できればいい。
米津さんのライブは確かにそういうものでした。
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私は一昨年あたりから、ライブにハマれなくなっていたのですが、
一方、もう1つの趣味だったゲームにも同様にあんまりハマれなくなっていて、もうゲームにハマることはないんじゃないかと思っていたところを、昨年発売された『Splatoon(スプラトゥーン)』というソフトがあまりに面白すぎて、その不安や閉塞感を一気に吹き飛ばしてくれました。
で、今回の『音楽隊』は、私にとってはライブに対するイメージとして、Splatoonと同じくらいの衝撃を受けて、
つまり、『Splatoon』も『音楽隊』もなのですが、「どうせ今回も面白くないんだろう」という先入観さえも打ち破る圧倒的な面白さ、そういうものがまだまだこの世界にあることを私に教えてくれる証拠になってくれたのです。
米津さんがライブの最後で語った「Bremen」「音楽隊」というタイトルの意味。
『ブレーメンの音楽隊』のストーリーになぞらえて、「理想郷というゴールにたどり着かなくても、その途中でそれぞれの幸せを見つけられれば、それで十分なのではないか」という話をしていました。
旅のゴールが一人ひとり違うように、ライブのゴールだって一人ひとり違うし、何か1つだけを追いかけなければならないわけではない。
『アンビリーバーズ』『パンダヒーロー』のような曲で、ライブで飛び跳ねる一体感も味わいたいし、『アイネクライネ』『こころにくだもの』のような美しい曲を静かに聴いている時間も味わいたい。
そして、米津さんのライブは、確かにそういった様々な幸せを内包していて、
私にとっては、そういうライブの形があって、それを米津さんが提供してくれた、そのことが何よりも「救い」でした。
至福の2時間を、本当にありがとうございました。と。あの場にいたすべての人に言いたいし、それを分かち合いたいです。
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ちなみにグッズはポーチとペンとマスキングテープとバルーンTシャツとラバーバンド買いました。¥6500。本当はパーカー欲しかったけど目の前で売り切れて絶望した。
ポーチは見た目ちょっと安っぽかったけど内側の布が結構良い感じで、思ったより丈夫そうでした。おすすめです。
あとライブと関係ないけどこの前「米津玄師スコアブック」も買いました。久々に楽譜をちゃんと見ながら練習してます。超難しい。
でも『アイネクライネ』『Flowerwall』『Blue Jasmine』『メトロノーム』あたりは弾きやすくてピアノ向きです。『アンビリーバーズ』も意外といける。ただテンポを原曲に合わせると死ぬ。このへんは割と弾けるようになってきました。
惜しむらくは全曲がピアノソロアレンジなので、「右手でメロディー・左手で伴奏」となっていて、右と左でリズムがずれるので難易度がクソ高くなってる曲がある上に、再現性若干低い曲もいくつかあること。ドーナツホールとかゴーゴー幽霊船とかはちょっと微妙。
逆に再現しづらかったのか、私の大好きな『リビングデッド・ユース』『Neon Sign』『雨の街路に夜光蟲』『シンデレラグレイ』などは収録されてないのも少し残念。
そもそも2本の腕だけで米津さんの曲を演奏することに無理があるわけで、弾き語りのための伴奏用、または2人での連弾用のアレンジをしたスコアが出てくれたらそのあたり解決できていいんじゃないかなあと思ってます。よろしくお願いします。