アニメ・ゲームのこと access_time2016.08.06 17:32 update

【感想】『ボルケニオンと機巧のマギアナ』は、ここ数年のポケモン映画への不満を解消した傑作

 ポケットモンスターの映画第19作、『ボルケニオンと機巧のマギアナ』を観てきました。

cncqqs8viaabqkr-9369348

 まず最初にはっきりさせておきますが、本当にすごく面白かったです

 ここ数年のポケモン映画で一番の傑作だと思います。何なら過去最高かもしれない。

 前情報ゼロ(ボルケニオンのタイプも知らなかったし、あらすじも全然見てなかった)で観に行ったからこその、この圧倒的な魅了され具合でもあったと思うので、

 できればこの記事なんか読まずにさっさと観に行ってほしいのですが、

 そういうわけにもいかないと思うので、この映画の魅力をなるべく熱く語っていきます。

 

 ところで、皆さん、最近のポケモン映画、観てますか。

 私自身(現在大学生)は、DP後期~BWあたりで一時期ポケモン映画から離れていたのですが、最近は小学生の弟の保護者として、ここ3年のXY映画を全部映画館で観ています。

 そして、一昨年の『ディアンシー』、昨年の『フーパ』を観た後に抱いた感想は同じでした。

 「出来が悪いわけではないけど、子ども向けすぎて退屈だった」

 あえて辛口に言えば「子どもが楽しめる」ことに特化していて、設定のディティールやストーリーの完成度は二の次、とにかく派手なシーンを見せるための、予定調和で「先が読めてしまう」映画。

 もちろん、ポケモンアニメのメインターゲットは子どもですから、そこに向けて作るのは当たり前だし、子どもでなくても、こういう難しいことを考えずに観られる映画が好きな人だってたくさんいると思う。別に悪いことじゃない。

 しかし、私はここ数年、『シュガー・ラッシュ』『アナと雪の女王』『ズートピア』を映画館で観て、「子ども向けのエンタメと大人向けのストーリーの両立」を見事に成し遂げるディズニー映画にどっぷりハマっていただけに、

 ポケモン映画もこういう作りにならないのだろうか? という歯痒さを感じていました。

 子どもも大人も楽しめる、ディズニーのような映画をポケモンは作れないのか。というか、原作ゲームではポケモン/任天堂が散々やってる領域なのに映画はどうしてできないのか

 

 で、今年。正直、GWに観たズートピアがこの手の映画として最強すぎたこともあって、

 「まあポケモンはいつも通りのストーリーなんだろうな」と、あんまり期待せずに観に行きました。

 しかし

 中盤あたりで胸の中にじわじわと広がっていく、「あれ、今年、面白いのでは……?」という感覚

 ストーリーの粗も、演出の無理やりさも、全然見えてこない。

 ただただキャラクターたちの魅力とストーリーの盛り上がりに心を掴まれる。

 そしてその勢いを維持したままの見事なクライマックス。

 CMで「この夏最大の感動!」って毎年言われる割にポケモン映画で感動したことはあんまりなかったのですが、今年は本当に感動しました。まさかポケモン映画で泣きそうになるとは……。

 ストーリーも最後の最後まで展開が読めなくて、ずっとドキドキしながら追いかけることができました。

 断言します。今年のポケモン映画は、「子どもも大人も、ポケモンファンでなくても楽しめるポケモン映画」です。

 

 だからこそ、「この映画をいろんな人に知ってほしい」と思うのです。

 私が観に行った時はうちの家族4人で貸し切りでした。ヤバい。

 この手のシリーズ作品は常に前作の評価を引き継ぐものなので、「去年までは退屈だったポケモン映画が今年突然アナ雪クラスの傑作になってるよ!」って言ってもオオカミ少年感あって絶対に信じてもらえないと思うけど、本当。マジ。

 今年のポケモン映画は、去年までのポケモン映画が好きじゃなかった人こそ観るべき作品だし、

 もっと言えばディズニー・ピクサー映画が好きな人が観るべき作品なのです。

 今年の作品は、そういう人が見ないと「ポケモン映画にしては地味なストーリー」くらいの評価で埋もれてしまう可能性があるのです!それは良くない!

 

 さて、ここまでの内容で観に行こうと思った方はこれ以降の文章は読まなくていいです。

 しかし、まだ信用できないという方のために、

 ここから『ボルケニオンと機巧のマギアナ』の具体的な魅力を解説していきます。

 

 まず初めに断っておきますが、この記事は「ここ数年のポケモン映画が不満だった人の目線」です。

 なので、ここ最近の映画……つまり『ケルディオ』『ディアンシー』『フーパ』が好きな人にとっては一部不快になる表現があるかもしれません。ご了承ください。

 と、いうか、ここ3年のポケモン映画観て、それが大好きだったって人は、他の人からどうこう言われる前に観に行ってますよね。

 そういう人を説得しても意味ないので、私は、ここ数年のポケモン映画が嫌いだった人/興味がなかった人を説得するためにこの記事を書いています。

 

Contents

1. ストーリーが王道かつ丁寧

 今年の映画、あらすじを超簡単に言うと「悪い奴らから幻のポケモンを守る」というポケモン映画のド定番なんですけど、

 そのストーリーにご都合主義的な展開が見られない。

 サトシたちが事件に関わっていく理由、マギアナを守る理由、悪役たちの動機、悪役との何回かに分けての衝突。

 その1つ1つに対してちゃんと納得できる理由付けと描写があり、ストーリーに説得力とリアリティを持たせることに成功しています。

 子供向け映画(子供向けに限らないけど)を大人の薄汚れた目線で観ると、

 「あ、今、物語の展開を都合よく転がすために偶然に頼ったな」とか、「あ、この悪役、今とどめ刺せるのに映画が終わっちゃうから手加減したな」みたいな野暮なことをついつい思ってしまう映画というのは結構多くて、

 ポケモン映画でも前年の『フーパ』なんかは割とそういうポイントがありました。(というかフーパの能力があまりにもチートすぎた)

 しかし今年の映画は違う。ストーリーの説得力があったし、突拍子のない展開もなかった。

 その点で、大人が観ても十分満足できる映画に仕上がっています。

 

2. 舞台と世界観が魅力的で住みたくなる

 今回の舞台は、ゼンマイ仕掛けの超カラクリ都市「アゾット王国」。

 アゾット王国は、局所的に流行しているスチームパンクの雰囲気、というかもっと端的に言えばラピュタです。

アゾット王国

 神秘科学の恩恵を受けて暮らす街。動く歩道があったりと、方向性としては『裂空の訪問者 デオキシス』のハイテク未来都市「ラルースシティ」に近い。

 個人的に私は小学生の頃から「ああいう街に住んでみたいなあ」と思わせてくれるポケモン映画が大好きで、その点で『デオキシス』のラルースシティと、『水の都の護神 ラティアスとラティオス』のアルトマーレが双璧でした。今回の『マギアナ』は久々にこの感覚を思い出させてくれる点でも大好きです。

 

 そして今作は、その科学都市だけでなく、ポケモンたちの暮らすネーブル高原も主要な舞台となっており、この「機械と自然」「人間とポケモン」の対比が1つのテーマとなっています。

 実は今年、久々に同時上映の短編がカットされ、その分本編が長くなりました(79分⇒97分)。ここにも、初めて短編がカットされた『デオキシス』との共通点が。

 短編がなくなった影響からか、最近のポケモン長編映画では省略されがちだった平和な日常シーンがふんだんに入っており、物語に緩急が生まれています。『ケルディオ』とか、本当に戦闘一辺倒で全くメリハリなかったので……。

 

3. 敵味方のスケール感が”ちょうどいい”

 先程も書きましたが、前年の主役ポケモン・フーパは、「伝説・幻ポケモンを呼び出す」というチート能力を持っていて、

 次から次へと歴代の伝説ポケモンが登場してバトルを繰り広げる画は確かに派手ではあったのですが、サトシとレギュラーポケモンが完全に置いてきぼりになっていました。

 というか、『ディアルガvsパルキアvsダークライ』の時も思いましたが、伝説ポケモンの戦いにポッチャマとかハリマロンが絡むの、さすがにサイズと種族値が違いすぎて無理やり感が拭えない。

 

 その点、今回の悪役はメガシンカポケモンを大量に従えて襲ってきます。

 このメガシンカポケモンというのが「ちょうどいいボス感」。普通のポケモンよりは強いけど、ピカチュウやテールナーでもギリギリ渡り合えそう。

 そろそろアニメXY終わるからアニメ本編に出せなさそうなメガシンカ全部出しとこうぜ的な思惑もあったのでしょうが、メガヘルガー・メガギャラドス・メガヘラクロスなどの強力なメガポケモンが勢揃いするのは迫力があります。

 

 対するサトシさんチーム。ボルケニオンも(ヒードランに似て)あまり伝説っぽくなく、その非常に人間らしいキャラクター、さらにちょっとした弱点を抱えていることも相まって「強いけど無双はできなさそう」。

 そして何より、アニメXYシリーズが今年秋で終わる(と思われる)ため、サトシのパーティがきっちり育ってる。

サトシのパーティ

 ↑ガチ

 アニメ本編あんまり観てないんですけど、いつの間にこんな面子を揃えたのか。ヨーギラスやフカマルといった逸材を進化させずに頑張っていたあの頃のサトシさんはどこへ。

 ともかく、このパーティとメガシンカのバトルは非常に熱い。実際のゲームのオンライン対戦でも十分あり得る対決なのが嬉しい。

 あと、今シーズンのサトシのパーティは飛行タイプが多くて、アゾット王国の神秘科学で飛行できるマシンも多く登場するため、空中での派手なアクションが見られて爽快感があります。

 

4. ボルケニオンとサトシの関係性

 今作はある意味、サトシとボルケニオンのW主人公です。

 物語はサトシとボルケニオンが謎の鎖(神秘科学のアイテム)で繋がれてしまうところから始まります。人間嫌いのボルケニオンですが、サトシから離れられないので仕方なく一緒に旅をすることに。

 2人はいがみ合いながらも敵とのバトルなどを通じてだんだんと絆を深めていく……。って、これ、見方によってはゼロの使い魔

 サトシは主人公であると同時にヒロインでもあるのです。

 

 アニポケXYのサトシはやや大人びている面がありつつ、もちろん熱血さゆえの未熟さ・危なっかしさもある。

 一方のボルケニオンもしっかりしているようでいて、マギアナのことになると冷静さを失ったり、人間をなかなか信用しない頑固な面があったりする。

 この2人の相性が凄く良い。お互いを補完することができる、いわゆるバディーものとしても成立しています。

 

5. レギュラーメンバーの活躍もある

 また、今回の舞台が「機械都市」ということで、発明好きなシトロンにスポットが当てられているほか、今作のマギアナが女の子らしい一面を持っているということでユリーカ・セレナも活躍。

 しかし何といっても今作の見どころは、ロケット団がちゃんと活躍することです。

 テレビ・映画問わず、AG以降のアニポケにおける長年の呪縛の1つである、「メインの戦いにロケット団が第3勢力的に介入すると話がごちゃっとする問題」。

 アニメDPでは完全にお約束消化のノルマとして扱われてたり、アニメBWではロケット団をガチの悪役にして猛反発を喰らったりと、試行錯誤が続いていますが、

 この点でも今回の映画は成功していて、ちゃんとロケット団に(彼らのキャラクターを損なわない形で)活躍の機会を与えているし、物語にしっかり絡んでいます。

 特にニャースはかなりフィーチャーされています。ニャースがこんなに大事な役割を担うとは思わなかった。

 

 

 ところで、今作、短編カットしたにも関わらず尺が全然足りてません。

 そのためか、アニポケの「お約束」、例えば、ユリーカがゲストヒロインを口説くシーンが削られています。

 といっても、完全カットというわけではなく……。映画を最後まで観ると、「こう来たか!」と思わされるはず。上手い演出であると同時に、それだけ内容を苦心して詰め込んだことが伺えます。

 

6. 伏線回収、テーマ、メッセージ性

 近年、偏執的な伏線回収アニメ映画といえばディズニーのお家芸でした。(参考:『ズートピア』におけるハードコア反復/伏線芸のすべて - 名馬であれば馬のうち

 まあ、伏線回収が多ければ多いほど良い作品なのか、という問題はありますが、それはそれとして、

 今年のポケモン映画、しっかり伏線張ってます。期待してください。

 キーアイテムの再登場もさることながら、

 クライマックスのサトシのセリフ。あまりにも物語として完璧すぎて鳥肌立ちました。

 そして、メッセージ性もちゃんとあって、作品の世界観、舞台設定、キャラクター設定、ストーリー、その全てが1つのテーマを支えるように作られています。

 この部分についてはもっともっと語りたいのですが、ネタバレ満載になってしまうので、近いうちに別記事で書きます。

 

7. 最後に

 他にもゲストキャラクターが全員魅力的だとか、マギアナが可愛いとか、ゲスト声優が全員上手いとか、特に松岡茉優さんが良いとか、言いたいことはいろいろあるのですが、とりあえず割愛。

 最後に予告動画を貼っておきます。

 『ボルケニオン』に関して、CM観てもこの記事で書いたような内容だとは1ミリも伝わってこないと思いますが、まあそれも当たり前で、公式の宣伝で昨年までの映画をdisるわけにはいきません。

 しかし、いつも通りの宣伝では、いつものファンしかついてこない。

 「去年までのポケモン映画はクソだったけど今年は面白い」というぶっちゃけた意見を言えるのは、こういう辺境の地のブログにしかないわけで、そのためにあえて喧嘩を売ることにしました。

 

 ところで、「前売券買ってないからボルケニオンもらえなくて損した気分になりそう」っていう人がいると思いますが、

 私も前売券買ってなくて今とてもヘコんでいるので安心してください

 ゲッコウガとかマジいらないって……前売券と逆にすべきでしょ……。

 

8/8 追記:続き書きました。例年映画と比べてどこが違うのか、というところを中心に、もう少し踏み込んで(中身にも触れながら)解説してます。『ボルケニオンと機巧のマギアナ』は例年の #ポケモン映画 とどう違うのか。そして、ポケモンはディズニーを目指すのか

【感想】『ボルケニオンと機巧のマギアナ』は、ここ数年のポケモン映画への不満を解消した傑作 への{{comments_list.length}}件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください


Fatal error: Uncaught Error: Undefined constant "is_single" in /home/users/0/main.jp-identalecords/web/blog/wp-content/themes/osd1904/components/category_posts.php:3 Stack trace: #0 /home/users/0/main.jp-identalecords/web/blog/wp-includes/template.php(785): require() #1 /home/users/0/main.jp-identalecords/web/blog/wp-includes/template.php(718): load_template('/home/users/0/m...', false, Array) #2 /home/users/0/main.jp-identalecords/web/blog/wp-includes/general-template.php(204): locate_template(Array, true, false, Array) #3 /home/users/0/main.jp-identalecords/web/blog/wp-content/themes/osd1904/single.php(124): get_template_part('components/cate...') #4 /home/users/0/main.jp-identalecords/web/blog/wp-includes/template-loader.php(106): include('/home/users/0/m...') #5 /home/users/0/main.jp-identalecords/web/blog/wp-blog-header.php(19): require_once('/home/users/0/m...') #6 /home/users/0/main.jp-identalecords/web/index.php(17): require('/home/users/0/m...') #7 {main} thrown in /home/users/0/main.jp-identalecords/web/blog/wp-content/themes/osd1904/components/category_posts.php on line 3
WordPress › エラー