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メディア・カルチャー access_time2016.11.13 22:38 update

アメリカ大統領選に関して思うこと

 まず、本題の前に、前回の記事で触れた「生ハムと焼うどん」の話題について、

 改めて読み返したらなんかおかしなことになっていたので補足。

 というのも、元々書こうとしてた話を一部書き忘れちゃってて、結果、なんか突然右翼左翼の話に持って行ったヤバい奴になっちゃってました……。

 で、ここからの話は、私がどちらの考え方に賛同しているかとは別の話として読んでもらいたいのですが、

 元々なんであの話題を拾いに行ったかっていうと、あの生うどんの騒動への評価って、ネットでだいたいの事情を知ってる人とそうでない人(水曜日のダウンタウン、ゴッドタン、ほぼほぼなどで初めて観た人)で結構分かれてる感じがあって、

 それはなぜかというと、セルフプロデュースアイドルっていう文脈がテレビでは全然使われてないんですよ。「新人の破天荒アイドル」「MCでコントをやるアイドル」っていう紹介で出てる。

 セルフプロデュースというのはつまり、ああいう滅茶苦茶な言動を上からの指示ではなく本人たちの意志でやっている、ということになります。

 それが、生うどんが炎上ギリギリなことをやっても温かい目で見てあげよう、みたいな流れが生まれる1つの理由だと思うのですが、これって、

 「事務所やレコード会社などの後ろ盾がない」ことが彼女たちの後ろ盾になってる、と言えるなあ、と。

 この逆転現象はとても面白くて、

 逆にナチス風衣装で炎上した欅坂の方は、しっかり左寄りの方がボコボコにしている一方、高須院長みたく右にお寄りになってる方が「ユダヤに媚びるな!」とか突拍子もないこと言ってて、でも支持層とイデオロギーが一致しているのでビジネスとしては全く傷ついてない。

 その点、生うどんは支持層とイデオロギーがある種一致してないわけで、一歩間違うと全方位から叩かれる危険性を孕んでるから、もし大した理由もなくノリで差別に手を出してるなら軌道修正した方がまだマシかなあという気もする次第。いや、わからないですけどね。

 

 そういう「最底辺にいる存在に上位層は優しくしてあげるので、中間層が一番割を喰ってる」という構図は今の社会の大きな問題だなあと思うわけで、それがトランプ大統領にも繋がっているわけです。綺麗な導入!

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 本題。

 しかしまあ、大統領選終わってからこういう反応が次々出てくるのでみんなよくわかってるなーっていう錯覚に陥りますが、この人たちだいたい全員「それでもクリントンが勝つ」って思ってたわけで、まだ起きていないことの分析というのは本当に難しいなあと思わされるわけです。

 と、いろいろ思うことはあるのですがもう1週間経ったのでさらっと。

 

・反”反差別”

 Brexitもそうだしトランプもそうなんだけど、

 黒人初だったオバマ大統領がアメリカの中心に8年いて、ポリティカルコレクトネスに代表されるような「差別は良くない」という動きがずっと主流にあったわけですが、そこへの不満はずっとあったんだろうなあと。

 関係ないけどポリティカルコレクトネスをポリコレって訳す人だいたい意味もわかってないし馬鹿にしてると思うので、英語圏に倣ってPCって略しましょう。ここでその概念の詳細な解説はしないけど、PCっていうのは要するにマイノリティの存在をちゃんと念頭に置いてから何かをしたり言ったりしましょう、ということです。Facebookの性別欄に男・女以外の選択肢が用意されていることとか。

 PC概念が「たとえ99%にとって都合の良いことであっても、残りの1%が不当な扱いを受けるのであれば対応すべきだ」と主張するのですが、それは同時に「99%の人にとっては今より少しだけ悪くなる」ことでもあります。

 日本でも同様の問題はいくらでも起きているので割と理解しやすいと思うんですよね。

 在日の人たちにも選挙権を、とか、生活保護をもっと手厚くすべきだ、とか、セクシャルマイノリティ(LBGT)にも異性愛者と同等の権利を、とか。

 そして、ご存知の通り自民党はその逆のことを進めているわけで、日本でそれが支持されているのだからトランプを支持した米国民と何も変わらないわけですが、

 「トランプに投票したアメリカ人は馬鹿だ」とか「クリントンが当選するだろうと思って賑やかしにトランプに入れたらなっちゃった」みたいなのはもうでまかせもいいところ。Brexitの時もそうだったけどツイッターでこういうアホなツイートを(たとえネタでも)RTしちゃうような人はさっさとブロックした方が賢明かと思われます。

 

 インターネットとの関連はわかりませんが、「反反差別」をよりわかりやすく言うなら「逆差別批判」という言葉になります。

 「これは日本人に対する逆差別だ」とか、「男性が逆差別されている」とか、そういった言説をSNSではたくさん目にしますよね。

 もちろん、そんなのはでまかせで、多くの点でマジョリティにとっては当たり前の保護を受けられていないマイノリティの、ごく一部の点を取り上げてマイノリティへの現実認識を歪めているわけです。ネット空間では痴漢冤罪問題がいつも叩かれていますが、実際の痴漢と痴漢冤罪のどっちの件数が多いかって言ったらまあ痴漢でしょう。表に出ていないものも含めて。

 

反エスタブリッシュメント

 反エスタブリッシュメントっていう言葉も、ぶっちゃけ大統領選終わってから初めて目にしたので自分の不勉強を反省しつつ。

 クリントンがレディーガガやら有名人と共同戦線を張ったり、マスコミが一致団結して応援していたり、そういうのが結局全部裏目に出たのだろうなあと思います。

 日本に置き換えて考えてみても、例えば嵐や石原さとみや錦織圭が

 「もっと弱者への保障を手厚くしましょう!」ってキャンペーンしたとして、

 「言ってることはごもっともだけど、お金があって生活に困ってないからそんなことが言えるんでしょうね!」

 ってなりそうだし、実際そうなったのがBrexitとトランプなんでしょう。

 このへん、自分の生活に関係ないところだと全然わからないのですが。

 

 ただ……、同時に思うのは、そういうお金のある有名人だって、プライベートとして考えれば、弱者を切り捨てることが是とされた方が嬉しいわけじゃないですか。

 だから、口であんなこと言いつつもトランプに入れたお金持ちも結構いるんじゃないかなと思ってます。

 トランプが勝った途端に東浩紀さんが

 ってツイートしてましたけど、この「ポリティカルコレクトネスうざい」ってお前が内心思ってることではともちょっとだけ思ったり。

 いや、まあ、心の奥底で差別感情があること自体を修正するのは難しくても、それを理性が上回って表面的に立ち回れば、それはそれでいいと思うし、内心どう思うかは別に関係ないと思うんですけど、今までPC尊重してた人たちがこういう意見を次々に発信しちゃうのはちょっと危険な感じがします。

 このあたりは難しくて、本音と建前というか、そりゃ白人男性からすれば黒人や女性や移民は排除されてくれた方が嬉しいんだけど、それをやっていいのかという問題もあって、

 そのみんながやりたくない役割をトランプが引き受けてくれた、というところのヒーロー性みたいなものもあるのかもしれません。

 

・トランプ=鳩山?

 トランプが勝ったことで「既成勢力・オールドマスコミの敗北!ネットの勝利!」みたいに盛り上がってるネトウヨな方々がいるのはまあ別にいいと思うんですけど、

 同じ口で「トランプみたいな馬鹿が大統領になって大丈夫か、って言われてるけど日本の鳩山/民主党政権よりマシ」みたいなことを言ってて、さすがにそれはアホすぎるなあって思いました。民主党叩ければ何でも楽しいみたいな人たちは人生幸せそうで羨ましい。

 何が言いたいかというと、トランプに対応するのは間違いなく安倍自民党で、民主党に対応するのはオバマ大統領なわけですよ。

 今ならオバマさんは堅実に仕事したイメージありますけど、あの人だって「CHANGE(変化)」とか「Yes we can」とかのキャッチコピーで引っ張った人なわけで、それは民主党の友愛がどうとかの外交戦略に近い。まあ、さすがに民主党よりはオバマ氏の方がミスが少なかった、というのは認めますけど。

 ところがそれはあまりうまくいかなかった。日本の方が一足早く崩壊しましたが、アメリカでもリーマンショックとかがあったわけで、遅かれ早かれという感じ。

 で、その流れからの揺り戻しとして、トランプの「make great America again」があって、安倍自民の「日本を取り戻す」があるわけです。

 まあ、さすがにぶっ飛び方では安倍はトランプより若干マシですし、日本に対する関心も低いでしょうけど、

 逆にアメリカの人からしたら、「日本人は何であんな憲法違反とか失言しまくってる自民党に勝たせ続けるんだ?」という風に見えていてもおかしくないと思います。

 何なら「日本人と違って自分たちは現実が見えてるからトランプを選んだ」と思っているのかも。それはちょうど「トランプを選んだ馬鹿なアメリカ人と違って、自分たちは民主党の反省があるから自民党をしっかり選んだ」と思うのと同じ。

 

 そして、安倍とトランプの共通点というのはもう1つ、選挙戦略にあって、「あまりに滅茶苦茶なことを言うので反対勢力が現状維持・反対しか唱えられなくなる」というパワーがあります。

 民進党は「改憲反対・集団的自衛権反対・アベノミクスは失敗」を唱えてるだけで、そこを「対案がない」と指摘されるだけでゲームエンドになってしまう。特に、こういう不景気・不安定な情勢では、現状に対する不満が積もっている人たちに、「悪くなるよりは今のままの方がマシ」というメッセージが全く刺さらなくなってしまうのだろうなーと。

 

・今後

 「トランプはネタで選ばれただけなのでめちゃくちゃやって次の4年で降ろされる」みたいな見方してるアホな人もいますが、ネタで大統領が選ばれることなんてもちろんないし、そういう見方が通用するならそもそも当選してないので、

 普通にトランプは次も勝つんじゃないかなと思っています。

 それは自民党と全く同じ戦法で、「クリントン時代に戻していいのか」と唱えるだけ。

 トランプや安倍がデタラメなことを言いまくって、反対勢力はその訂正に追われて自分たちの主張ができないまま負ける、という流れに対して、ここからの4年間でいわゆる左派勢力が回答を見つけられればいいですが、たぶん無理だと思ってます。少なくとも民進党では無理。

 で、政権運営の方ですけど、これまで言ってきたことに反して、たぶんそこまで過激なことはしない、というかできない、と思います。

 ただ、過激なことはしない、だけで、ちょっとずつマイノリティの立場が悪化するのだろうなと。でも、そういう小さな変化は見ないふりをして、過去のイメージに対して批判を続ける。「在日は得てる不利益より利益の方がでかい」論と一緒。このへんのディストピア感については日本は先進国ですのでアメリカのリベラルな方々にはぜひ参考にしてもらいたいです。

 

・その他

 あと、ちょっと危ないな、って思うのは、「今回の選挙でポリティカルコレクトネスは全否定された」みたいな論が出回ってること。

 いや、まあ選挙結果は0か1かだからそうなんだけど、現実にトランプよりクリントンに入れた人の方が多い(得票数)という側面は無視しちゃいけないですよ。負け惜しみだからそれを以て実質勝利とかいうのはダサいけど、「アメリカでは差別が全肯定されたんだ!」とか調子に乗って言っちゃう人はそれはそれでヤバいと思う。直接民主制ではないですからね。

 この前の参院選で自民党に投票した人全員が憲法改正に賛成しているわけではなかったのと一緒。まあ、自民党はそうだったことに何となくしようとしてるわけですが。

 

 それから……あ、そうそう、今回のを「ネットメディアの勝利・エスタブリッシュメントの敗北」というのは結構なんですけど、トランプがテレビショー出身で、しかも金稼ぎまくってるエリートであることもまた事実で、大きな枠組みとして世界は全然変わってないしたぶん変わらないだろうとも思います。

 こういう「現状維持よりは変化の方がマシ」というヤケクソ思想は民主主義の1つの欠陥というか弱点であって、20世紀に民主主義国家が次々に戦争に走ったのと同じことがこれから起こりかねなくて、そうなるとしたら間接民主制そのものに問題点があるのかも……と思ったけどbrexitは直接民主制か。

 これ以上やっていうとやっぱり人間はクソだという超上から目線な結論になるのでこのへんで止めておきます。社会って難しい。私がマジョリティに属することのできる人間だったらもっと幸せに生きていけたのだろうなあと思うと辛い。

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