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lyrical school『TAKE ME OUT』の感想

 12/16(土)、lyrical schoolのワンマンライブを恵比寿LIQUID ROOMで観てきました。

 5月に現体制始動してから約半年、そのこれまでの活動の集大成として位置付けるにふさわしい、最高のライブだったと思います。

 セトリはTwitterからお借りして。


 ……最初はある程度客観的な書き方をしようと思いましたが、そういうのはもっとアイドルに詳しい方の記事が続々と上がってくると思うので、諦めます!笑

 というわけでいつも通りに個人的な話になってしまいますが、ご了承ください。


LIQUIDROOMという最高の空間

 まず、ここ数ヶ月、リリスクの最近のパフォーマンスにいろいろネガティブなことを書いてしまっていたのですが撤回します。すみません。

 そもそも9月以降、個人的にいろいろバタバタしててリリスクのライブイベントはほとんど行けてなかったのですが、

 その中でブクガも観たくて唯一行った「MY DATE on SEP.」で、あんまりノりきれなかったんですよね。『夏休みのBABY』のリリイベの楽しすぎた記憶が美化されていたこともあって、「あれ?期待したほど楽しくなかったな、、、」みたいな。

 あと時間見つけて一回だけ新宿マルイメンも行ったのですが、それも思ったほど楽しめなくて、

 あとららぽーと新三郷のYouTubeでのライブ映像を観た時に、どこか「遠くに行ってしまった感」というか、自分の知らないところで知らない人たちが盛り上がっているのを観た時に近い感覚があって。

 そこにインタビューで度々「TIF以降リリスクのパフォーマンスが変わった」というメンバーの発言もあって、ひょっとしたら「自分は変わってからのリリスクが好きじゃないのかも」と不安になりました。

 そこで、ワンマンは一旦ネガティブな感情を払拭して新鮮な気持ちで観ようと思い、2ヶ月くらい距離を置いた上でワンマンライブに臨んだのですが、

 実際には、そんな心配が杞憂に思えるほど楽しむことができました。

 まず、今回のLIQUID ROOMという会場が良くて、柱が邪魔だった『NEW GAME』、会場内の空間が区切られていた『MY DATE on SEP』などと違って、

 バンドのライブもできる、シンプルに会場の全てを見渡せる広い空間。だからこそ一体感を目いっぱい味わえる。

 その上で、ミニライブではカットされがちな前体制曲によって会場を沸かせてくれるし、一方でアイドルではなくアーティストと呼ぶべき新体制曲たちはライブハウスで更に映える。

 アンコール後のMCでも、楽しそうな掛け合いで魅了してくれました。

 今回のワンマンライブは、格好良さと可愛さを両立した上でどっちも最高! という、アイドルとアーティストのいいとこ取りなパフォーマンスになっていたのではないでしょうか?


 そのうえで新曲の『PIZZA』のようなさらに新しいテイストまで飛び出して、いろいろなモードを持ったアイドルとして、楽しませてくれました。

 そういう多様な魅力の全てを、ミニライブという短い時間、かつYouTubeという物理的に断絶のある媒体で伝えるのは難しく、

 特に新体制スタイルの確立を目指した最近のライブでは、どっちつかずにならないようにあえて「格好良さ」というファクターに絞ってきたのだと思いますが、

 それは決してリリスクが完全にアイドルではなくヒップホップグループの方向に先鋭化していくことを意味しない。

 上のららぽーとの映像観た時に、本当にもうリリスクは可愛い感じを一切出さない方向に行くんじゃないかと思っちゃったんですよねw でもそういうことではなさそうで良かったです。


 それを知っているか知っていないかというのは私の中で大きくて、

 例えば今後のミニライブやリリースイベントで、クールなモードだけを見せることがあっても、それは変化ではなく単なる集中だとわかるし、

 可愛い部分はMCやその後の握手会で見られればいいし、こちらとしてもその時々のリリスクの姿を楽しめるようになりたいと思います。


可能性を広げる新体制曲と、安心感を与える前体制曲

 今回のライブのセットリストについて思うのは、「思ったより前体制曲の存在感があった」ということ。

 前体制曲が安心感を与える、というのは、決して「古参ファンが多いから」とか「昔の曲の人気が高いから」みたいな話がしたいのではなくて、

 単純に、前体制曲の方がJ-POP的で客受けがいい、というだけだと思うんですよね。コールも入れやすくてノリやすいし。


 新体制曲、特に『夏休みのBABY』『Concrete Jungle』以外の(つまり新体制が始動してから制作された)新曲たちは、従来よりもヒップホップ色が色濃く、アイドルではなくガールズラッパーと呼ぶのが適切な、クールな曲たちです。

 そういう曲が好きな人もたくさんいるし、もちろん私も好きです。

 ただ……リリスクファンの中での割合がどの程度かわかりませんが、少なくとも私は、リリスク以外のヒップホップとかラップって普段ほとんど聞かないんですよね。欅坂とかアニソンとかのそれっぽいやつは除くとして。ライムベリーとかCreepy Nutsとかをたまに聴く程度。


 もちろんヒップホップはリリスクの唯一無二の個性でアイデンティティだし、新体制の5人の魅力を最大限に発揮しているのはそこなのでどんどんやるべきだというのは前提として、

 ヒップホップを全面に出しすぎないことが、旧体制から一貫してリリスクの、振り幅の大きさ、客層の幅広さに繋がっている部分があると思っていて。

 私自身、リリスクを好きになったきっかけは『ワンダーグラウンド』ですが、これも最初に心を掴まれたのはラップ部分よりむしろサビのメロディーのエモさだったりします。


 せっかくリリスクにはそういうJ-POP寄りな曲がたくさんレパートリーにあるのだから、

 新曲も前体制のような曲にして! とまでは思わないんですが、ライブでそれを無理に減らさない方がいいんじゃないかと思うし、

 今回のライブのように、ヒップホップ度がグッと高くなって、「パフォーマンスを魅せる」方向な新体制曲の中にところどころ、tofubeatsさんの手掛けた曲群であったり、『brand new day』『photograph』『サマーファンデーション(今回はなかったけど)』であったりのような、

 コールによって観客と一体になって、サビではしっかり歌い上げて盛り上がるような、ある種ベタな曲も入ってくることで、シンプルに盛り上がるポイントが生まれるし、

 前体制曲がほとんどなくなった普段のミニライブよりも、個人的には新旧入り混じる今回のライブの構成の方が緩急もあって楽しめました。


LIQUID ROOMという場所と、ヒトリエについて

 私がリリスクについて語ろうとすると、必ずヒトリエの話が例として登場するので、一度ここでしっかり説明しておきます。

 「ヒトリエ」というのは2012年に結成された4人組のロックバンドです。

 リーダーで作詞・作曲を行うギターボーカルのwowakaさんは、2009年頃からVOCALOIDシーンで活躍し、『裏表ラバーズ』『ワールズエンド・ダンスホール』などの曲で大ブームを起こした方で、

 その後、2011年にVOCALOIDを引退、2012年に自身が中心となる4人組のバンド「ヒトリエ」としての活動をスタートさせました。

 私はボカロ時代のwowakaさんの大ファンで、ヒトリエもそのままスライドするように追いかけ始めましたが、そのwowakaさんの作る楽曲は、ボカロ時代と比べて次第にそのテイストが変わっていき、

 VOCALOIDならではの無機質な言葉選びや打ち込み主体のシンプルで繊細な曲から、有機的なバンドのライブを前提とした、より演奏技術で魅せる大胆な曲と人間的な歌詞が増えてくるようになっていきました。

 そして私は、ボカロ時代の曲と歌詞が本当に大好きだったからこそ、そういう曲がどんどん減っていくこと、ライブでも演奏されなくなることに苛立ちやもどかしさを覚えずにはいられず、

 wowakaさんが「自分たちはどんどん進化している」「今のライブの方が昔より絶対に良い」というような発言をするたびに深く傷つき、

 ライブからVOCALOID時代の曲をゼロにすることを理想のように語る姿に失望し、それを賛美するファンとの温度差にも耐えられなくなって、1~2年前からライブにもほとんど行かなくなりました。


 そして実は、そういうヒトリエの姿勢にズレを初めて覚えたのが、まさに恵比寿LIQUID ROOMで3年半前に行われたワンマンライブ「マネキン・イン・ザ・パーク」でした。

 ボカロ時代のカバーがこれ以上増えることは見込めなくて、ただ減る一方であるし、ライブが洗練されていくにつれてパフォーマンスは予想の範疇に収まってしまい、ドキドキもない。

 そんなライブをあと2回くらい観て、とうとう行くのを止めてしまったわけですが……。


リリスクをリセットしないということ

 『TAKE ME OUT』について不安があるとすれば、「上記のヒトリエのようになってしまうんじゃないか」ということでした。

 あえてトゲのある言い方をすれば、恵比寿LIQUIDROOMという場所で、lyrical schoolは、前体制をなかったことにするようなパフォーマンスをするのではないか?

minan LIQUIDROOMは現体制最大のキャパということで、リリスクにとって分岐点的なものになると思うんです。これからもっと大きくなるか、停滞してしまうのか。気持ちとしては、できればLIQUIDROOMは現体制の曲だけでやりたいんです、本当は。でもワンマンは曲数も多いので前体制の曲もやることになると思うんですよ。

lyrical school「つれてってよ / CALL ME TIGHT」インタビュー|生まれ変わり突き進むアイドルラップ道 (3/3) – 音楽ナタリー 特集・インタビュー

 特にこのminanさんの発言が、どうしても過去のwowakaさんとオーバーラップしてしまって。


 自分がリリスクのファンになったのが去年4月なので、もうそろそろ新体制になってからの方がファン歴長いくらいで、他のヘッズの方たちほど前体制に強い思い入れがあるわけではないんですけど、

 でも前体制で好きな曲もたくさんあるし、

 何より「昔と比べて今の方が絶対良い!」みたいなことを、昔から好きだった人もいる前であんまり言ってほしくないなという、それはリリスクに対してじゃなくてあらゆるアーティストについて思ってしまうんですよね。それは自分がヒトリエにされてずっと苦しかったことなので。

 もちろん新体制になっての変化が悪いとは思わないけれど、それ100%にせずに上手く新旧織り交ぜた形に、都知事っぽく言うとアウフヘーベンする感じで、どうにか落ち着いてほしい、

 落ち着いてほしいけどそうなることは、おそらくないんだろうな……と半分諦めながら今回のライブに行きました。


 だから今回のライブで一番びっくりしたのは、「新体制になってから初披露の前体制曲」があったことです。

 5月の”NEW GAME”で前体制曲のレパートリーは十分揃っているはずだから、わざわざ増やすことなく、(言葉は悪いけれど)新体制曲で足りない時間の穴埋めにNEW GAMEから数曲持ってくるような構成になるんじゃないかと。

 なので『わらって.net』には驚かされたし、『マジックアワー』もMY DATEで観た時よりも自分たちのモノにしているように見えたし、

 それらが時間を埋めるためではなくきちんとリリスクの欠けてはならない一部として披露することが、それまでのリリスクをリセットせずに進んでいくという意思表示に見えました。

 5月のお披露目ワンマンで1曲目に披露された『brand new day』を、2曲目という早い段階で披露したのも、

 5月のワンマンと、そして前体制のリリスクから、全て地続きのところに今回のライブがある、というアピールなのではないでしょうか。

 「新しいことをする」「昔からの伝統を引き継ぐ」を両立するのはすごく大変な道だと思いますし、新体制曲がどんどん増えていくであろう来年以降もそういう道に進み続けてくれるかどうかはまだわかりません。

 ただ、(私の中では)そういう両立を諦めて別の道に行ってしまったヒトリエという前例があって、そういう単純な路線変更によって切り捨てられてしまったファンがどれだけ複雑な思いで新しい姿を見ることになるかを知っているつもりなので、

 今のリリスクがその両立という困難な道に果敢に挑戦してくれて、新しいファンも昔からのファンも全部連れて行くのであれば、私はますますそれを応援したいし、できればそうあってほしいと願っています。

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 メンバー全員が可愛くてカッコいい、一人一人のキャラクターが良い、みたいな話は以前にも書いてきたし他にもいろんな人が書いていると思うので、ここで改めて詳しく説明はしませんが、そういうことももちろん思いました。

 相変わらずhinakoさんの魔性っぷりはやばいしrisanoさんの会場を盛り上げるスキルも進化しているしyuuさんのラップもボーカルもどんどん上手くなっていてあと誕生日おめでとうございます。当然minanさんの安定感とhimeさんのエースっぷりも最高です。hinakoさんのキャラクターほんと最高ですよね。あの子のおかげでリリスクが良い意味でカッコいいに振り切れずに進んでいるように思います。

 そういうのはもちろん踏まえた上で、今のリリスクはどんどん進化していますし、これからも進化していくのだと確信させてくれたライブでした。

 正直このワンマンまで、リリスクが今後も良くなっていくと断言しきれない、もしかしたら私の中ではむしろこのライブで気持ちが離れちゃうんじゃないかという感じもありましたが、

 このライブでそういう気持ちはなくなって、来年もリリスクのことを追いかけたいと改めて思いました。あのような最高のライブが観られて本当に良かったです。

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