『あいどる♥ミュージックリレー』の解説(ニコニコメドレー編)
この度、ニコニコ動画とYouTubeに、『あいどる♥ミュージックリレー』という動画を投稿しました。
このメドレーについては、先日の解説記事で書いた通り、

『あいどる♥ミュージックリレー』の解説(コンセプト編)
この度、ニコニコ動画とYouTubeに、『あいどる♥ミュージックリレー』という動画を投稿しました... 続きを読む
自分の好きな曲をとことん詰め込んだメドレーで、
しかも盛り上がっていく後半に向かうにつれて自分の趣味色を濃くしていくという暴走を見せました。
まさに自分のためだけのメドレーであり、
自分の趣味をほとんど完全に排除してニコニコの総括だけを目指して作った、3年前の『ニコニコ動画幻奏環』と真逆に位置するような作品です。
一方で、この『あいリレ』というメドレーは、実は構成的には強く「ニコニコメドレー的なもの」を指向しました。
ニコニコメドレーが何かというのは大百科でも見てもらうのが早いと思いますが、要は「ニコニコユーザーによく知られた曲で作ったメドレー」です。
選曲・コンセプト段階で完全に自分の趣味だけを追求したので、
出来上がったものは全くニコニコメドレーではないし、これが自分以外の誰かに受け入れられるとも思っていないのですが、
ただ、この作り方をすれば面白いニコニコメドレーができるのではないかという思いもあるので、
この記事では、どのような試みをしたのか、ということを書いていきます。
正直なところこの文章はメドレー作者以外には何の価値もないと思いますが、このメドレーそのものと同じように、自分が書きたいから、そして、未来の自分が読み返す時のために、書いておきます。
3年前に「幻奏環解説」という記事を別のブログに上げまして、そのブログ自体はもう消滅しているのですが、その時の記事を昔のPCから掘り返して読んでみたら意外と面白かったので、この記事も3年後くらいにそういうものになるかもしれません。
ちなみにその3年前の記事もついでなのでこのブログに上げ直しておきますので、興味のある方は合わせてどうぞ。

幻奏環解説
この記事は、2015年1月12日に別サイトで公開した記事(現在はレンタルサーバーの関係で閲覧不可能)を... 続きを読む
Contents
『幻奏環』の反省から続編へ
このメドレーを製作するにあたって、実は近いうちに『幻奏環』の続編となる正統派ニコニコメドレーを作ることを意識していました。
つまり、『幻奏環2』を作りたいけれど、いきなり作るにはブランクがありすぎるので、幻奏環2に向けたアイデアをこの完全趣味メドレーで試してみて、その反応を見ながら音源も構成も流用して作ろうという考えです。
もっと言えば、当初の予定では『あいリレ』を昨年秋頃に投稿して、この春までに正統派の新作ニコニコメドレーを投稿するイメージすらありました。
それが実現していない理由は、就活や卒論やその他いろいろで忙しく時間が取れなかったこと、Surfaceのデータ全破損でそもそも製作自体を断念しかけたこと、プロジェクトデータが消えて「このメドレーのために作った音色を流用する」という目論見も崩壊したこと、など。
なので、ここから書くことは、幻の新作にフィードバックしようとした理想の話です。
現在、新作ニコニコメドレーを作る予定は全くありません。数ヶ月後には作る気が起きているかもしれませんし、一生起きないかもしれませんし、
そして当然、ここに書いた通りの内容になるかどうかもわかりません。
幻奏環は何が悪かったのか?
ニコニコメドレーには伸びるものと伸びないものがあります。
タイミングなどの運がなくて、良いメドレーが伸びないことは多々ありますが、運があっても悪いメドレーは伸びません。
そして、『ニコニコ動画幻奏環』は、良くないメドレーでした。
いろんな方が「幻奏環好き」とか「もっと評価されるべき」とか言ってくださっているのはありがたいし、私自身も個人的には大好きなメドレーなのですが、
話題の動画としてニコニコトップに数日間掲載されるという、大ヒットしてもおかしくない追い風を受けながら殿堂入りに達しなかったのは、そういうことだと思います。
もし『幻奏環』の次を作るとしたら、どこをどう直せばいいのか? ということを考えるために、
(当時)直近の殿堂入り作品の代表であった、『ニコニコ動画摩天楼』『NICO VIVACE』『ニコニコ動画十年祭』『ニコニコ動画難民祭』の4作を何度も聴きました。
そして、これらの作品と幻奏環が何が違うのかを分析した結果、
・最初がオルゴールアレンジから始まらない
・転調が多い
・曲が変わるたびに雰囲気が変わる
という問題点が浮かび上がりました。
特に、最大の問題は、転調が多すぎること。
他の人気メドレーは転調があまり多くない一方、幻奏環の転調回数を大雑把に数えたら、60曲しかないのに23回前後転調しています。
作っている間は何度も聴いているので、脳内では綺麗に繋がったように感じますが、初めて聴く人にとっては雰囲気がコロコロ変わるメドレーに思えたのでしょう。特に序盤で。
幻奏環のコメントに「繋ぎが上手くない」「ぶつ切り」という意見が多数寄せられていましたが、それを音楽的に解釈すると「転調が多い」「曲ごとに雰囲気が違いすぎる」ということになるのではないか、と結論付けました。
もっと言えば、メインのメロディーの音域を変化させすぎないという点もあって、あれだけ転調の少ない『ニコニコ動画摩天楼』の「残酷な天使のテーゼ」⇒「紅蓮の弓矢」の転調に衝撃を受けました。
そしてもう1つ、幻奏環は、ジャンルごとの曲数のバランスにとんでもなく気を遣った作品でした。
「2011~2014オールスター」というルールの下では、幻奏環の選曲は完璧だったと今でも確信しています。
にも関わらず、「ボカロが多い」「ラブライブが多い」というコメントが結構来ている。
その理由は、曲ごとの扱いの差が影響しているのではないかと考えました。
作っている側がどれだけ曲数を基準に調整しても、厳密に曲数を数えながら聴いている視聴者はいませんから、
「ラストに千本桜とドーナツホールのボカロ2連続」「印象に残りやすい2曲目にラブライブ、ラスト手前にもスノハレ」というだけで文句を書いたのだと思います。
もちろん、幻奏環が伸びなかった理由は他にもいくつかあると思います(例えばタイトルの微妙さや動画の地味さ、そもそも曲を2011-14に絞ったコンセプト自体など)。
が、少なくともこれらの点は、音楽にあまり詳しくない視聴者に対しても影響があったはずですし、運ではなく実力で明確に改善できる点でもあります。
そこで、『あいリレ』は、「これらの欠点をロジカルに解消するにはどういう作り方をすればいいのか?」ということを考えるところからスタートしました。
ジャンルメドレーの集合というアイデア
メドレーとしてすべての曲を一定に扱うことはできないし、「重ね」などの技法がある以上、印象に残る曲・残らない曲が出てしまうのは仕方ありません。
ジャンルごとの時間まで数えていたメドレーが昔あったような記憶もありますが、それも根本的な解決にはならない。
そこで、「そもそも各ジャンルの中で一番有名な曲を1曲ずつ特別目立たせて、その合間にそれ以外の曲を挟んでいく」という作り方をすれば、
目立つ曲だけしか記憶に引っ掛からないような視聴者に対しても、観終わった後に格差を感じさせずに作れるのではないかと考えました。
大きなニコニコメドレーの中に小さなジャンルメドレーが連なっているようなイメージです。
しかも、その目立つ曲でしか転調が起こらないようにすれば、転調の回数も減らすことができます。
この作り方を試したのが今回のメドレーで、
「2次元アイドルパート」「声優アイドル&アイドルアニソンパート」「メジャーアイドルパート」「マイナーアイドルパート」「リリスク×スプラパート」「カオスゾーン」「エンディングパート」に分かれていて、
『メッセージ』『ニュームーンに恋して』『サイレントマジョリティー』『snow irony』『ワンダーグラウンド』『サマーファンデーション』『アンノウン・マザーグース』がそれぞれ長めに使われています。
(全体を通してだんだんと知名度の低い曲に流れていくという軸もあるのですが)
この7曲での大きな枠のメドレーの中に小さなメドレーがある、という構成になっていて、実際にリリスク×スプラパートは、去年12月に単体マッシュアップとしてTwitterに公開しました。
リリスク×スプラ以降で完全に趣味に走っているので三次元アイドル成分が多くなってはいますが、それ以前に関してはある程度バランスが取れていると思います。
また、転調の多さについても、ゾーンが変わるキメの部分でしか転調しないようにしたことで、メドレーとしての統一感はかなり高まりました。
ジャンルごとにパートを分ける作り方そのものがニコニコメドレーに応用できるかはともかく(ボカロゾーン、東方ゾーン、などと分けたら絶対面白くないので)、
「パートごとに区切る構成で統一感のあるメドレーが作れる」ということ自体が1つの発見であり、今回のメドレーによる実験は成功だったと言えるでしょう。
あと、冒頭はオルゴールアレンジから始まっています。摩天楼とVIVACEと十年祭が全部そうなのだから、もうこれは理屈抜きに正解なのだと思って良いのではないでしょうか。
次の曲を予想する楽しみを多くする
もう1つ、このブロック分けメドレーには個人的なメリットがありました。
そもそも、自分がメドレーを作っていて、または聴いていて、一番楽しいのはどこか、と考えた時に、
「主旋律のないイントロの時点で自分の好きな曲なのでどの曲かわかる」という演出です。
例えば『男尻祭2』の『ローリンガール』、『男尻祭3』の『やさしさに包まれたなら』。
あの特徴的なイントロのピアノを、音色も調も全くわからないほどに大きく崩していますが、知っていればもう1小節で「ローリンガールだ!」とわかる、その興奮。
これを受けて、自分の「幻奏環」の『Snow halation』『ドーナツホール』でも、
イントロをしっかり使い、しかもかなり大胆にアレンジすることで、「知っていればイントロでわかる、サビに入ればみんな気づく」という演出を取り入れています。
特に『幻奏環』の「ドーナツホールアレンジ」は、自分で言うのもなんですけど抜群の出来で、あのアレンジを気に入った部分として挙げる方も多い印象があります。
なので、次のメドレーでは、この手法をたくさん使いたい、と思いました。
1曲目やラストだけではなく、もっと頻繁にこの演出で盛り上がりを作るにはどうすればいいか。その答えが、「短いメドレーを繋げていけば、それぞれのメドレーの最初はイントロだけで一旦クールダウンできる」という発想です。
アップダウンをかなり激しく付けているこのメドレーでは、『ニュームーンに恋して』『サイレントマジョリティー』『snow irony』『ワンダーグラウンド』『サマーファンデーション』『ローリンガール』(アンノウンからの繋ぎ)と、気持ちの高まるイントロが6回も出てきます。曲自体が有名ではないので私しか気持ちが高まらないのですが。
自分のニコニコメドレーの集大成として
既存メドレーへのアンチテーゼ、実験場
自分が今までニコニコメドレーを作ってきた中で、常にトライしてきたことは、
「自分なりの問題意識と、それに対するオリジナルな解答を探す」「お約束をあえて壊してみる」ということでした。
その多くは、実はほとんどの視聴者にとっては大した問題ではなかったりもするのですが、ただ、自分の中で気になったことにはちゃんと答えを出して、クリアーにして進みたい、という思いがあります。
例えば、『裏表メドレー』は「ニコニコメドレーには”ニコニコメドレーシリーズ”タグ以外の導線がない」という問題を解決するために作ったし、「メドレーファンの方を向きすぎない」ために1作目はあえて「カオスゾーンなし」という作り方をしました。
2011年頃には、「『流星群』以降、陰陽師カオスゾーン〆がさすがに多すぎる」と思って、『幻日環!』では「陰陽師カオスを中盤に配置」「ラストは『般若心経ポップ』カオス」とやってみたり、『コンベアU』では「君が代カオス」という悪ふざけを取り入れてみたり。
2013~14年頃には、「昔の定番曲が入っているオールタイムメドレーばかりが伸びている」ことへの回答として、『幻奏環』では「思い出は億千万」「U.N.オーエン」「Bad Apple!!」のアレンジを取り入れることで古参に媚びつつ新曲縛りを通しました。
その時々で流行っていること、他の人がやっていることをそのまま真似たくないので、常に「ちょっとズラす」。
今回の『あいリレ』も、人気メドレーを自分なりに咀嚼して、自分のオリジナリティを織り交ぜるようにした結果できあがったものです。
そして、とりあえず浮かんだアイデアは全部一度は試してみたい、という思いも同時にあって、
正統派ニコニコメドレーでできないことの実験場としてそれ以外のメドレーがありました。
例えば、『ニコニコンベアー』の「弾幕注意!」という看板は、「弾幕の箇所に入ってからコメントを書くのは無理だから事前に提示して準備させておいた方がいい」と思って付けたものです。
『コンベアU』では、その数日後に投稿予定だった動画のBGMを使うことで、公開⇒採用までの最速記録をマイナスにしてやろうという試みをひっそりやったり(誰にも気づかれていないので記録にもなっていませんが)。
私の作ったメドレーの中でダントツに評判の悪い『ニコニコメドレー(2010+2011×2012)』というのがあるんですけど、これも、「個々に独立した2つのメドレーを重ねる」というアイデアを実際にやってみたものです。
私は、感覚的にメドレーを作っていくことが得意ではないので、頭で考えて構成を作っていくことが多く、
その結果として、非常に頭でっかちな、発想先行で中身の伴わないものが出来上がることも多々あります。
このメドレーは、良くも悪くもそういう自分のクセみたいなもの、が非常に色濃く出ている構成になりました。自分のイメージ通りに実現しきれなかったこともたくさんあるし。
ただ、今回のメドレーでうまくいかなかったことは、もし次にメドレーを作る時は躊躇なく捨てられるので、そういう意味でもこれを作ったことは良かったです。
ニコニコメドレーの作り方で、私だけのためのメドレーを作る
今の私は、ニコニコをほとんど観なくなって久しいし、プレミアム会員ですらありません。
だから、普通のニコニコメドレーを作っても、観ても、楽しくなりません。
ニコニコメドレーが「ニコニコユーザーの多くが知ってる曲を、その人たちの思い出を最大限に刺激できるように美味しいところだけを繋げた」ものであると定義するのであれば、
この『あいどる♥ミュージックリレー』は「私がよく知ってる曲を、私の思い出を最大限に刺激できるように繋げた」ものです。
言い換えれば、10年前のニコ厨にとっての『陰陽師』や『億千万』が、今の私にとっての『ワンダーグラウンド』や『アンノウン・マザーグース』だということです。
ただし、その思い出を刺激するメソッドは、正統派のニコニコメドレーと何も変わらないので、
『幻奏環』を始めとしたメドレーを頑張って作った経験がなければこの作品は作れなかったとも思います。
では、この作り方で、本当に材料から全てニコニコメドレーだったらどうなったのか?
選曲とコンセプトが完全に独り善がりだから私しか楽しめないけど、もし選曲とコンセプトがもっと大衆的だったら、
本当に今のニコニコユーザーが楽しめるものになったのか?
その答え合わせをする気力が現在の自分にない、そこにエネルギーを注ごうというモチベーションがないのは残念ですが、
でも、そういう夢を見ている時期が一番幸せなのかもしれない、とも思います。
もしくはこの記事を読んだ誰かがそういうメドレーを作ってくれたらそれも面白いと思いますし、構成だけ作って誰かに打ち込みを任せられたらもっとできることの幅が広がるのかもしれません。それができないことも含めて1つの能力の限界なのですが。