フラワー・ストーリー 第33章
めぐみとライオンが、共に落ちていく──。 そう思ったが、めぐみはしゃがんだ瞬間にあの壁を登ったときに使った爪にゴムロープを巻き付けたものを地面に突き立てていた。 ゴムの反動で、めぐみは足場に戻る……つもりだった。 ところが、ゴムはあまりの勢いと熱さに、足場に辿り着く寸前で切れてしまった。 今度こそめぐみが落ちていく……。 ところが、めぐみはあり得ない反射神経で足場に裏にもう一つの爪を突き刺して、何とかバランスを取った。 めぐみは自分でも何をしたのかわからないかのような顔で一瞬呆然としていたが、やがて足場に復帰してきた。 そして、唖然としてめぐみを見ていた私たちを見て、怒鳴りつけた。 「何をぼけーっと見てんの?しぬわよ!!」 めぐみの叫びで、私たちは我に返り、一気に駆け出した。 道を進んでは、崩され、戻り、別の道を進み、また崩れる。 そんな繰り返しが続いた。 だんだんと道がなくなるにつれて、体力も気力もなくなり、恐怖だけが大きくなっていく。 それでも、少しずつ出口に近づいている。 いくつもの火柱の間を通り抜けて、ようやく出口に辿り着いた。 先頭のめぐみがいち早くそこに辿り着き、美羽がその後を追って出口に着く。 私も続けて入ろうとしたが、僅かな差で足場が崩れ始めた。 何が何だかわからないうちに、私は落ちていった。 ……はずだった。 私も死を覚悟していたが、その前に美羽が動いた。 間一髪、美羽が私の足をつかんで引っ張りあげたのだ。 「ありがとう……」 「今度は、あたしが助ける番だったね☆」 美羽が笑った。 めぐみも笑った。 私も笑った。 全員、ホッとしたように笑った。 ********************** 「花びら、取れなかったね……」 美羽ががっかりしたように呟いた。 火口はあのあとすぐに大爆発によって完全に塞がれたので、再びあの洞窟に戻るのは無理だろう。 そう考えていると、突然めぐみがふふっと笑った。 「何がおかしいの?」 私が気になってそう聞くと、めぐみが突然何かを見せた。 それは、紅く輝く、花びらだった。 「何でこれを!?」 「ほら、さっき足場から落ちそうになったじゃない? あの時、あの足場の裏にこの花びらが隠されてるのを見つけたのよ」 それで、めぐみは一瞬固まってたのか。 私は変に納得した。 「でも、これで、3分の2集まったんでしょ?次の花びらは、どこにあるの?」 「確か……星くず草原、だったかしら?」 「ああ、あそこね。だったら、この近くにあたしの作った地下通路があるから、そこを使えばそこまで一気に行けるわよ?」 「ありがとう!」 「でも、あたしはもう少しここでやる事があるから。 この近くに、地球人の基地があと5個くらい残ってるの。 たぶん、また会えるから。その時こそ、地球人をフルボッコ……じゃなくて、追い払おうね?」 なんか聞いてはいけない単語が飛び出したような……。 とにかく、私たちはついに第4の花びらを手に入れた。 目指すは第5の花びらがある星くず草原。 でも、その前に……。 「またこの山を降りないといけないの!?」 魔の火山は、最後まで私たちを苦しめるのだった。 ...