『アスタリスク』と『キャバルリィ』の違い、"俺TUEEE"作品の定義について
前回(『デモナータ』と『ハリポタ』と『禁書目録』、ファンタジーにおける「日常」の終わり)に続いて、物語に関する考察第2弾です。 12月に入り、今期のアニメも続々と最終回を迎えていますが、私がなかなか楽しんで最後まで観た2つのアニメがありまして、 『落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)』と『学戦都市アスタリスク』です。 (※アスタリスクは1話有料なのでPVを載せています。) この2つはラノベアニメのテンプレをなぞりすぎたがために、ストーリー展開の何もかもがそっくりだとして当初から話題になっていました。 具体的にどこが似ているのかは、ネット上のゲスい話題にタダ乗りしてそれっぽくニュース記事の体裁を整えることでPVを稼ぐサイトでお馴染み、ねとらぼさんでまとめられています。 ねとらぼレビュー:あれ、昨日も見た……? 内容かぶりすぎな秋アニメ「学戦都市アスタリスク」と「落第騎士の英雄譚」の見分け方を考える ? ねとらぼ
・学園物である ・主人公がヒロインの着替えシーンにバッタリ遭遇してしまうところから始まる ・着替えを見たことでヒロインの怒りを買い主人公と決闘することになるが、主人公が勝つ ・ヒロインが髪の赤いお姫様で、剣使いで炎を操り、ツンデレ的な性格でめっちゃ強い ・主人公が弱そうに見えて実は強い ・ヒロインがマッチョな斧使いに勝つシーンがある……まあ確かにこの通りです。 ほかにも、3話で敵に襲撃される、4話で強敵と戦って勝った後に主人公とヒロインがいい雰囲気になってED、などなど、展開の被り方は尋常ではありません。 ……しかし、です。 『キャバルリィ』と『アスタリスク』が、完全に同じ内容、またはよく似た内容のアニメなのか?と言われると、そうは思えないのです。 その根拠として……いや根拠というほどでもないのですが、それぞれのアニメをずっとニコニコで観ていると、 開始1分ほどでどちらの動画にも「面白い方」「つまらない方」というコメントが付いている。 もしこの2つが同じ系統の作品で、同じ種類の魅力があるのであれば、「両方好き」という人ばかりになるのが自然です。 それこそ『ごちうさ』と『きんモザ』のどちらも好きだという人が多いように。 しかしこの2つの作品の評価は割れていて、片方が好きで、もう片方が嫌い、という人がたくさんいるのです。 どうしてこの差が生まれるのか?この2つの作品はそれぞれどういう特徴があるのか? というのを視聴しながらぼんやり考えていたのですが、私なりの結論として、 『アスタリスク』は「最近のラノベテンプレ」、『キャバルリィ』は「一昔前のラノベテンプレもしくは少年漫画テンプレ」ではないかという主張をしてみたいと思います。 -------------------- 『落第騎士の英雄譚』と『学戦都市アスタリスク』は、どちらも「ラノベアニメのテンプレ」と評され、場合によっては「クソアニメ」と表現されます。 なぜクソかといえば、あまりに既視感のある世界観・設定だからでしょう。 ファンタジーバトルが展開される学園を舞台に、主人公が次々と強敵を倒していく……。 実によくある展開です。主人公無双、いわゆる俺TUEEE状態。これでは「ラノベアニメはみんな同じ」と言われるのも仕方ない……。 ……いや、ちょっと待ってください。 そもそも、そんな書き方をしたら、どんなアニメも大筋は同じ。王道とはそういうものです。 主人公が毎回ボロクソに負けるアニメなんて、それ自体がコンセプトである変化球アニメ以外に存在するでしょうか。ラノベに限らず漫画だってゲームだってそれは同じです。 主人公が勝つのは当たり前なのです。主人公だから。 だとすれば、差別化ポイントは「勝ち方」にあるのではないでしょうか? -------------------- キャバルリィとアスタリスクの主人公は、1話で最強と称されるヒロインに勝ち、そこからアニメでは連戦連勝……という流れで被っています。 しかし、この2つを「主人公が無双する話」で括ることはできないのです。なぜかといえば、 アスタリスクは「最強の転入生が才能で敵を倒していく話」で、 キャバルリィは「最弱の落第生が工夫で敵を倒していく話」なのです。 2つの作品の設定を素で混同している人も多いと思うのでこのあたりが混乱されがちなのですが、そもそもアスタリスクの主人公は弱くないし、弱いと思っている人もいません。特待生です。 さすがに無双するわけにもいかないので一定の制限がかかっているとはいえ、基本的には強いです。 なのでアスタリスクの主人公は戦いにおいても特に戦略を練ったりすることはなく、力押しで勝っていきます。 アニメ後半で始まるトーナメントでは、タッグ戦にも関わらず1人だけで瞬殺することでタッグ技を見せないという、モブキャラとの圧倒的な力の差を見せつける戦法で勝利していきます。 一方のキャバルリィはといえば、主人公はFランク、学校の最底辺・ワーストワンです。 才能のない主人公が努力で手に入れた唯一の武器が「一刀修羅」です。 ストーリーの都合として、一刀修羅使えば勝てるじゃん最強じゃん! みたいに思えてしまいますが、 いや、1日1回、しかも1分しか使えない力って冷静に考えて弱いですよ。弱くはないにしても最強ではない。 そういうわけで、アスタリスクとキャバルリィは基本設定からして全く違うのですが、 どちらも王道展開であるがゆえにストーリーは似通ってしまうのです。 -------------------- まず「キャバルリィ」のテンプレがどこから来ているのかという話なのですが、 上で触れたように一昔前のラノベ、または少年漫画テンプレだろうと考えます。 といっても私は少年漫画は一切読んだことないのでラノベで話しますが、 この手のストーリーで最もメジャーなのは『とある魔術の禁書目録』でしょう。 主人公・上条当麻は公式には超能力の使えない「無能力者(レベル0)」ですが、イレギュラーな能力「幻想殺し」を持っており、それを駆使して超能力者や魔術師たちと渡り合っていく。 まさに落第超能力者の英雄譚です。 この手の、「主人公は基本的に弱いが、癖のある武器を持っており、その使い方を工夫すれば実力差をひっくり返せる」という話は、物語の基本です。 主人公がどうしようもなく弱かったら話にならないし、めちゃくちゃ強かったら感情移入できません。 弱い人が頑張って勝つ、頑張れば勝てる、というところにロマンとカタルシスがあるのです。 いわゆる「友情・努力・勝利」の後半2つです。 ちなみに、この記事で言う努力というのは「たくさんトレーニングした」みたいな話ではなくて、 「必死に頭を使って戦う」「苦戦しながらなんとか突破口を見出す」という戦闘そのものでの話です。 別に上条さんも鍛えているわけではないですしね。逆にキャバルリィとアスタリスクの主人公はどっちも鍛えてますし。 ところで「友情」部分なのですが、キャバルリィの主人公が独特なのは、その生い立ちゆえに ...