ヒトリエ『IKI』感想、不完全ながらも希望を感じる新境地
ヒトリエの新譜『IKI』を買って聴きました。 前提として、私の現在のヒトリエに対するスタンスは 「wowaka時代からの熱狂的なファンだったけど最近は方向性変わってる感があって嫌いになりつつある」というものです。詳しくは下の記事を。 「DEEPER」は悪くないけど、最近のヒトリエはなんか違うと思う あと、最初にはっきりさせておきますが、私は音楽を聴くときに演奏技術の優劣について一切何とも思わないタイプなので、ベースの安定感がどうこうリフの難度がどうこうみたいな話は特に語ることもできないので、そのへんはご承知ください。バンドとかやってなくてずっとDTMなので「楽譜では表せない魅力」みたいなものが少しもわからないのです。 と、まあ、こういう感じなので、正直なところ今回のアルバムも全然期待してなくて、というか発売日を忘れててAmazon MusicでDL購入したレベルなのですが。 ええと……まず最初に断っておくと、ヒトリエもIKIも嫌いなわけではないです。 このへん難しいのですけど、好きな曲とかバンドって普通べた褒めがスタートラインなので、「好きな部分と嫌いな部分が同居している」っていう言い方をすると、その時点で嫌い寄りに見えちゃうじゃないですか。そういうことではなくて、「好きが強いけど好きが100点ではない」ということです。
好きな曲揃いではないけど、楽曲の幅は広がった
個人的な話になりますが、ヒトリエに限らずどんなアーティストでも、「嫌いな曲」ってほとんどありません。 例えばBUMPもRADもミセスもセカオワもAKBもでんぱ組も、別にファンというわけではないけど、たまたまYouTubeとかテレビで新曲見つけて聴いたら割と気に入ることが多いし、 その好きのレベルには差があるけど、「これ嫌い」とか「これ良くない」って思うことはほぼありません。 ただ、「嫌いじゃない」と「好き」って、結構違うもので。 それらの、私にとって「嫌いじゃない曲揃いである」バンド・アーティストのファンになるかと言ったら、そうではなくて、わざわざ積極的に新曲を追いかけたりするモチベーションにはならない。 と、前置きが長くなりましたが、 今回のアルバム、レーベルによるアルバムの説明文にはこう書かれています。2016年2月にリリースしたセカンド・フル・アルバム『DEEPER』からわずか10カ月。全曲新曲で届けられるアルバムは、ライヴやイベントと並行して制作されたヒトリエ史上最も幅広い楽曲群が収録された意欲作。「幅広い楽曲群」というのは確かにその通りで、穿った見方をすればBUMPっぽかったりRADっぽかったりボカロっぽかったりするものも若干ありますが、とにかくヒトリエの新たな面を見せている曲は多いと思います。 『リトルクライベイビー』はありそうでなかった開放的なテイストだし、『Daydreamer(s)』はアニメEDのタイアップ取れそうな爽やかさがあるし。『極夜灯』『さいはて』はそれぞれ『イマジナリー・モノフィクション』のあの2曲に似てて懐かしかったりもします。 で、その中には「『DEEPER』『WONDER&WONDER』っぽいかな」と思う曲もあって、それが『心呼吸』『イヴステッパー』あたりなのですが、 今回のアルバムが、この系統の曲だけで作られてたらもうそろそろヒトリエのファン辞めてたんじゃないかと思っていて。 ここで勘違いしてほしくないのは、別にこの2曲が嫌いなわけでは全然ないんですよ。このアルバムにこの曲が要らなかったとかも全く思ってません。 「嫌いじゃない」曲です。 でも、私にとって「嫌いじゃない」「そこそこ好き」レベルで止まる曲しか出てこなくて、そういう曲しか今後も出てこなさそうなら、そういうアーティストを追いかける理由は最早ないので。 で、私にとっての前作『DEEPER』は、こういった意味での「嫌いじゃない曲」が並んでいたアルバムでした。 ヒトリエだから優先して聴くし、聴けばもちろん良い曲なのだけど、そこに「ヒトリエ」というフックがなかったら、気に留めずにスルーしてしまいそうな楽曲。 でも、『IKI』のように幅広く曲が並んでいる中でこういう曲が少しある分には、「まあ、こういうのもあるか」って思えるんですよね。 全曲が自分の大好きド真ん中に来るようなアルバムがあれば、もちろんそれは最高なのだけど、そんなものはそうそうないってわかってるので。 その点、今作のアルバムは最初に聴いた時点ではあんまりピンと来るものがなかったのですが、『ハグレノカラー』『Daydreamer(s)』『リトルクライベイビー』がかなり好きなので、もうそれで十分満足だし、今後もこういう曲が時々出てくるなら追いかけられるような気がします。