フラワー・ストーリー‐本編 14年前

フラワー・ストーリー 第50章

「ああ、真衣!」  私が出て行くと、美羽がほっとしたように笑って迎えてくれた。 「どんな願いにし……ええ!?!?」  美羽が、私の後から出てきた人たちを見て、すっごく驚いた。  その時の驚きぶりといったら、録画できないのが残念すぎるくらい、可笑しかった。  でも、そうなるのも、当然かもしれない。  だって、私の後ろから出てきたのは、夢人と、めぐみと、萌香だったから……。 『私の願いは………、夢人とめぐみと萌香を、生き返らせる事です』 (よろしい。本当なら、どれか1人を選べ、と言う所だが……。  お前は、理由も目的も、そして選んだ願いも、今までここに来た人物とは比べ物にならないほど、しっかりして、輝いていた。  その願いを拒むほど、私は鬼ではないからな……)  だんだんと闇が晴れていくのがわかった。 (さあ、お前の望まぬ世界に戻れ、花崎真衣よ。  そして、望む世界を、望んだ人物とともに、創り上げるがよい)  闇が消え、目の前に現れたのは、元の部屋。  でも、私の周りに、3人の人が倒れているのが、前と違うところだった。  それは、前と全く変わらない、夢人と、めぐみと、萌香だった。  殺されたときの傷は、完全に消えていた。 「ううっ……」  3人が、呻きながら起き上がった。 「あれ?何で、あたしたちここにいるの?」  どうやら、死んでからの記憶は消されているらしい。 「実は、3人とも、願いの塔に入る途中で、地球人に殺されたの」 「え?じゃあ、真衣も……?」 「違うわ。  3人とも、花びらの力で生き返ったのよ」 「ええ!?だって、花びらで、地球人を倒すんじゃ……?」 「花びらの力で、無理に奪い取った幸せなんて、意味がないと思うの。  それに、地球人を殺したら、私たちも、地球人と同じレベルに落ちてしまうわ。  それよりも、私たち5人の力で、地球人を倒して、平和に終わらせたいって、思ったのよ」 「……そっか。そうだな」 「私は、賛成よ」 「あたしも」  3人とも、思い思いにうなずいてくれた。 「じゃあ、部屋の外で美羽が待ってるわ。  さあ、早くしましょう?  タイムリミットまでは、2週間半くらいしかないわよ?」 「そうなんだ……。  でも、確かに、地球人を殺すだけじゃ、だめかもしれなかったわね」 「ああ。でも、時間が足りない事には変わりない。  急がないと、本当にまずいな」 「わかってるわ。  だからこそ、3人を呼び戻したのよ?」 「じゃあ、目指すのは、地球人の本部ね?」 「ドリームウィングが、初めて全員集まるな」  今まで、ばらばらに活動していた、本部と北支部のメンバーが、結集する時。  最終決戦が、近づいている。 「頑張ろう、ね?」 「ああ」 「もちろん」 「わかってるわよ」 「頑張ろう!」  私たちは、それぞれの想いを胸に、お互いの手を重ねあった。  最後の、戦いに向けて。 ...

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フラワー・ストーリー‐本編 14年前

フラワー・ストーリー 第49章

私は、花びらを取った瞬間に、何か劇的な事が起きると思っていた。  なので、何も起きなくて少し拍子抜けしてしまった。  でも、ケースに一緒にいれて重ねてみても、まだ何も起きなかった。 「まさか……」  この伝説は、単なるおとぎ話……?  だとしたら、今までの冒険や、夢人たちの犠牲は、なんだったんだろう……。  言い知れない恐怖を感じながらも、ある事に気づいた。  花びらが嘘なら、ここに美羽が入れなかった事や、この塔のさまざまな仕掛けの説明がつかないではないか。  そう考え直して、私はこの部屋をくまなく探し始めた。  すると、不思議な版を発見した。  それは、*という星印の形の薄い溝が彫られている石版だった。  その大きな記号の上に、文章が英語で彫ってあった。  ただし、古くて、ところどころが消えかかっている。 《C--le-t D--am-. A-d, --an-e T-e Wo--d》 「何だろう、これ……」  美羽がいれば、もう少し、簡単に解けるかもしれない。  私は、ここで、仲間の大切さを改めて強く感じさせられた。  私は文章は考えてもわからないと思い、しばらくその形を眺めた。 「あ!」  よく見ると、ちょうど花びらが入る大きさのようだ。  私は、1枚ずつ、花びらをはめ込んでいった。  夜空のような、紫の花びら。  光を反射して輝く、黄金色の花びら。  透明に近いほど澄んだ水色の花びら。  紅に染まる、赤の花びら。  人を落ち着かせるような、緑の花びら。  そして、光を全て吸い込んでしまうような、漆黒の花びら……。  全てを石版にはめ込むと同時に、石版が光りだした。 「うわあっ!」  私は、目のくらむようなまぶしい光に包まれ、そのまま意識を失った。 *********************** (気がついたか、少女よ。)  意識はなく、周りには闇しか見えない。  でも、声だけが聞こえてくる。 「誰?誰が話してるの?」 (私か?私が名乗る必要は、ない。  お前が、この空間に来たのには、わけがあるのだろう?) 「え?」 (お前は、この空間に来る、権利を得た。  ここに来た以上、私はお前の願いを一つ、叶えなければならない。  もちろん、叶えない、という選択肢も、あるがな。  ただ、どんな願いでも叶えられるというわけではない。  誰かの個性を奪う願いは叶えられない。  あの人の性格を直してほしいだとか、自分を好いてほしいとか、そういった類の事はだめだ。  あとは、願いを増やす、という願いもだめだ。  だが、それ以外なら、何でもいい。  さあ、どうする?)  そういわれて、私は考えた。  私の願いは、地球人を追い払う事。  つまり、今すぐ地球人を1人残らずころせば、それで済む話だ。 「私の願いは……」  そこまで言って、私は言葉を切った。  地球人の命を奪う願い、それは、間違った方法ではないか?  侵略者の庭で、考えていた事を思い出した。  たとえば、地球人の全てを奪ったとしよう。  そうしたところで、私、いや私たちに残るのは、罪悪感だけ。  そんな事、私は望んでない。  なら……。  地球人のいなかった時代に戻り、地球人の来ない未来を迎える?  たとえそうしても、やはりこの時代に取り残された人々は、ここで終わりを待つ事になる。  それに、夢人やめぐみや萌香に会えない世界。  そんな、運命を無視した世界に、意味はない。  なら、私が望むのは……。  誰も死なずに、平和に、共生できる世界を創る事。  つまり、この世界を変える事。 「あ……!」  あの石版の意味も、ようやくわかった。 《C--le-t D--am-. A-d, --an-e T-e Wo--d》  これは、きっと、 《Collect Dreams. And, Change The World》  と書いてあったのだろう。  夢を集めなさい。  そして、世界を変えなさい。  でも、その言葉は、きっと、罠。  私は、花びらを使って世界を変えたりはしない。  そんな、近道は、しない。  私は、花びらを、世界を変えるための準備として使おう。 (願いは、決まったか?) 「はい」  本当は、家族にもう一度会いたい、とも思う。  でも、両親や、稔が、望んでいるのは、そんな事じゃなくて。  私たちが、この世界を変える事だけだと、思うから。  本当は、もっと戻したい、そう思う。  あの人を1人で呼び戻したら、それは一番酷な事かもしれない。  でも、1人1人の小さな幸せは、優先できないから……。  本当は、もっと欲張りたい、そうも思う。  全てを戻せたら、それが一番いい。  でも、私は、その人たちの分まで、頑張れるようにする。  そのためには、私たちが5人で集まる事が、一番重要で。  だから……。 「私の願いは………」 ...

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フラワー・ストーリー‐本編 14年前

フラワー・ストーリー 第48章

私が、美羽と出会ったのは、小学校の頃だった。 『私は、花崎真衣。あなたは?』 『……菊川美羽』  美羽、あの時は両親を失ってすぐだったから、今からは想像できないくらい暗かったな……。  でも、結局、そんな不思議な境遇だったからこそ、私と親友になれたのかもしれない。  そう考えると、出会いって、運命だったんだ、って思える。  同じように、夢人との出会いも、きっと運命なんだろう。 『僕は風沢夢人。美羽と一緒にドリームウィングを立ち上げた、ドリームウィングのリーダーだ』  地球人が侵略してこなかったら、夢人とは出会えなかった。  ほんの少し、ほんの少しだけ……地球人に感謝しよう。  運命といえば、夢人とめぐみの、不思議なつながり……。 『あたしの名前は、めぐみ』  あの時は、記憶喪失って知ってショックを受けたけど。  幼い頃に離れ離れになったのに、私と美羽を間に挟んで、最終的に再会できた……。  あんな状況で記憶を取り戻せるなんて、誰も予想できなかっただろう。  だから、きっと、地底の湖で、めぐみと出会えたのも、運命で……。  ああ、地底の湖では、私の兄、稔とも不思議な出会いをした……。 『わかった……俺の名前は、稔(みのる)だ。よろしくな』  結局、稔は裏切ったんだけど……。 『お前らの……命だ!』  私は、兄をころした。  今でも、それは自分の大きな過ちだと思う。  でも、あの時は、自分の命を守る事で精一杯で……。  こんな形で思い起こさせられるだなんて、全く思わなかった。  霊魂神殿では、お母さんの亡霊に会った。 『おいで、真衣……』  あそこで徘徊してるって事は、未練があったのかもしれない。  お父さんや稔に会って、ちゃんと霊界に戻ってくれればいいけど……。  でも、お父さんと、あんな形で会えるなんて……。  それに、侵略者の庭では、萌香とも会えた。 『私は、春野萌香』  恭介と付き合ってただなんて……。  もし、また会えたら、いろいろと事情を聞きたいと思う。  2人とも、天国で仲良くしてればいいな……。  私は頭の中で、今まであった事を思い返した。  目の前には、漆黒の輝きを放つ、花びらがある。  私は、美羽との思い出の品である、ピンク色のケースを出した。  美羽と一緒に謎を解いて、竜と戦い、最後はわかり合った、彗星の滝。  初めての冒険だったから、不慣れな事もあったな……。  めぐみと会って、ドワーフを倒して、稔と戦った、地底の湖。  強くて、優しくて、めぐみは、本当にかっこいいと思った。  雪菜さんに会って、最後は夢人に助けてもらった、吹雪の島。  もし夢人の助けが間に合わなかったら……。  そう考えると、とても恐ろしい。  めぐみと再会して、また一緒に戦えた、魔の火山。  暑かったな……。  その一言しか浮かばない。  萌香や恭介に会って、お父さんと再会した、侵略者の庭。  少しだけでも、お父さんとまた会えて、話せて、すっごく幸せだった。  そして、願いの塔……。  私は、この冒険に決着を付ける。 「見てて、ね……」  お父さん。  お母さん。  稔。  雪菜さん。  萌香。  恭介。  夢人。  めぐみ。 「それから……」  扉の向こう側でどきどきしているであろう、美羽。 「今、終わらせるよ」  私は、一歩一歩、黒い花びらの置いてある台に近づき、黒い花びらを手に取った。 ...

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フラワー・ストーリー‐本編 14年前

フラワー・ストーリー 第47章

「うっ!」  突然、めぐみが痛そうに呻いた。 「どうしたの!?」 「下から……銃弾が……!」  みると、めぐみの額に穴が開いている。 「うそでしょ?」  この期に及んで、まだ地球人は人を殺すのか……。  耳を澄ますと、発砲音がしている。 「とりあえず、早く!上まで行けば安全よ!」  私はそういったが、めぐみは取り合わなかった。 「あたしは、もう、だめだから……2人だけで、行って……」 「私は、これ以上、仲間を失いたくない!」 「だったら!!」  私は反論したが、めぐみに怒鳴られた。 「何でわからないの!?今すぐ1人失うのと、時間をかけて2人失うのとでは、どっちがいいか……」  そういうと、めぐみは私たちに向かってにこっと微笑んだ。 「今まで、ありがとう」  めぐみは、ポケットから小型の爆弾を3つ取り出すと、その全てに火をつけて、それをしっかり抱きしめそのままロープを滑るように降りていった。  その数秒後に兵士たちの悲鳴があがり、直後にすさまじい爆発音がした。 「そんな…………」  私は、愕然とした。  この塔に入るためだけに、3人もの大切な仲間を、失ってしまった事を……。 「あれ?」  美羽が呟いた。  美羽は取っ手に手をかけて開こうとしていたのだが、扉がびくともしないのだ。 「もしかして、花びらを5枚集めたものを持っている1人しか入れない……って事かな?」  美羽は少し考え、やがて扉から離れた。 「真衣、早く」 「え?でも……」 「あたしは、真衣のこと信用してるから。さ、早く。  夢人とめぐみと萌香の命、無駄にしたくないでしょ?」  私はその言葉に背中を押され、最後の花びらの待つ部屋へと足を踏み入れた。 ...

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フラワー・ストーリー‐本編 14年前

フラワー・ストーリー 第46章

「めぐみを……よろしくな」  夢人はそう呟いた。 「夢人!?」 「くるな!!」  私も美羽もめぐみも、すぐさま駆け寄ろうとしたが、夢人に一喝された。  今にもその命を終えようとしているとは思えないほど、力強い声だった。 「ぼくなら、大丈夫だ。  3人が、生き延びてさえくれれば……」  その言葉で、私たちははっと気づいた。  夢人は命を賭けて私たちの事を守ってくれた。  その犠牲を、無駄にする事なんて絶対に許されない。 「ありがとう、夢人……」  私はそれだけ言うと、まっすぐ塔へと向かった。  美羽とめぐみもついてくるが、最上階までは花びらが無くても来れる。  兵士たちも、中に入ってきた。  長い攻防が、始まろうとしていた。  塔は、ただ階段だけが続いてるわけでもなく、いくつかの仕掛けがあった。  まず最初には、少しだけやわらかくなっている階段の途中に落とし穴がしかけてあって、落ちると一つ下の階に落とされてしまう、無限ループに近い趣向のトラップが仕掛けられてあった。  ただ、私たちの場合落ちるとすぐにころされかねないので、ループしている余裕は無かったけど……。 「うわっ!」  私も美羽もめぐみも、落とし穴を踏みかけるとすぐに避け、しっかりした足場に戻らないといけなかった。  かといって、慎重に進んでいると敵が迫ってくるので、即断・反射神経を強いられていた。  それでも、地球人の足止めにもなったようだったので、それだけが救いだった。  ほんの少しだけ塔に感謝した。  そのうち、ようやく落とし穴エリアは抜けられたが、続いてエスカレーターのように階段が落ちていくエリアになってしまった。 「何のエネルギーなの?これ……」 「たぶん、魔力……だと思う」  少しでも気を抜くと、すぐに流され、やはり地球人のところへ運ばれてしまうので、油断できなかった。  ただ、下の方から悲鳴が頻繁に聞こえてきたので、地球人の足止めにもなったのだろう。  少しだけ塔に感謝した。  何とかそのエリアを抜けると、地味にうざい、傾斜が5度上がった平らなスロープエリアに入った。  数値的には微妙だけど、実際は結構急になっていて、体力の消耗が最初の頃の比ではなかった。  しかも、さっきの逆走で十分疲れていたので、あとはアドレナリンだけで頑張っている状態だった。  ただ、下の方から聞こえてくる音も、だんだんと小さくなっていて、下っ端の戦士がリタイアしていっている事がわかった。  まあまあ塔に感謝した。 「あとどのくらいかな?」 「まだ、半分くらいだと思う……」  そして、だんだんと仕掛けは恐ろしくなっていた。  もはやアスレチックと化していて、階段がなくなっていた。  代わりに壁に微妙な大きさの突起が付いていて、そこを足掛けとして登っていく仕掛けとなっていた。 「こわっ……」  下が丸見えになっているこの仕掛けは、かなりの恐怖を味わわせるものとなっている。  しかも、下に見えるのは、底なしの闇だけではなく、大勢の兵士もいたから、恐怖は倍だった。 「でも、これなら、楽じゃない?」 「どうして?」 「とりあえず、先に行ってて」  私はめぐみに言われるまま、めぐみを後ろに行かせた。  するとめぐみは、移動と同時にいくつかの突起をナイフで切り落としていった。 「あ……」 「これで、邪魔できるわ」  めぐみは無邪気に笑っていた。  すごく怖かった。  さらに行くと、突起からロープに代わり、吊り下げられた(といっても、支えは横からだけど)ロープを伝って進むようになっていた。  手がかなり疲れていたけど、さっきよりは楽になっている気がした。  さすがに可哀想に思ったのか、めぐみはロープを切りはしなかった。 「あたしが今まで、地球人を何のためらいもなく殺してたのは、あたしの家族とか、そういったものを全て奪ったって思ってたから。  でも、夢人に会えたから……」  殺されたとはいえ、失ったものを一瞬取り戻せた喜びは、めぐみにとって大きいものだったのだろう……。  そんな事を考えながら無意識にロープを手繰っていると、突然何かに当たった。 「あれ?」  それは、最上階への扉だった。  知らないうちに、私たちは最上階に着いていたらしい。 「やった!!」  私がそう叫んだ瞬間、それは起こった。 ...

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フラワー・ストーリー 第45章

「え……?嘘でしょ?」  美羽が呟いた。 「第一、夢人に妹がいたなんて、聞いてないよ……」 「当たり前だ。誰にも言ってなかったんだから……」  夢人はふうっ、とため息をついて、続けた。 「3歳の頃……ぼくは、めぐみと、ずっと遊んでた……。  でも、ある日突然、めぐみは消えた……」 『ねえ……めぐみは……どこへ行ったの?』 『めぐみは……いなくなっちゃったのよ……』 『うそでしょ?だって、めぐみは、ずっといっしょにいるんだよ?やくそくしたんだから……』 「あたしは、夢人が寝てる時、少し両親と出かけて……その途中、両親が買い物でコンビニに入った瞬間、誘拐されて……記憶を奪われて……」 「そんな…………」  確かにめぐみの過去は謎に包まれてたから、兄弟や姉妹がいても不思議ではない。  でも、こんなに身近にいただなんて……。 「あたしは……風沢めぐみ、かぁ……」  めぐみが、そう呟いた時、突然どこかから銃声がした。 「伏せろ!」  夢人が叫んだ。  しかし、すでに遅く、私たちは全員撃ち抜かれる……はずだった。  ところが、寸前で私と美羽とめぐみを、夢人が突き飛ばした。  そして夢人は、3発もの銃弾をまともに食らって、そのまま倒れてしまった。 ...

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フラワー・ストーリー‐本編 14年前

フラワー・ストーリー 第44章

「めぐみ!?どうしてここに!?」 「そろそろ願いの塔に着く頃かな、と思って来たのよ」  そういいながらもめぐみは、あたりを注意深く見回していた。 「ただ、ちょっと失敗しちゃって……」 「何を?」 「来る途中、地球人の兵士に見つかっちゃったんだよ☆」 「え……」  見ると、兵士がさらに30人ほど戦闘に加わろうとしていた。 「ほら、サーベル。何とかしないとね」  あんまりフォローになっていないフォローをされたが、今さらどうにもならない。  私は、覚悟を決め、大群を迎え撃った。 「ジャンクにしてやる!」 「ちょっ、それはまずいって!!いろいろと!!」 「じゃあ、みっくみくに……」 「ふざけてる場合じゃないから!」  すぐに相手が戦場に乱入してきて、私は、敵たちと入り乱れた状態となった。 「おりゃああああ!」  敵の1人が雄たけびを上げて斬りかかってきた。  私はぱっと回転しながらそれを避け、後ろをサーベルで鋭く突いた。  さらに、目の前に迫る敵へと、無意識のうちにナイフを突き出した。  両側から襲い掛かる敵たちが見えたので、私は深く考えずにジャンプして一気に足を開き、敵2人の顔面を蹴り飛ばした。  ……無意識で動ける自分が、少し恐ろしい。  戦いながらも、何とか辺りを見回した。  萌香は相変わらず恭介と一騎討ち。  めぐみは次々と敵を倒していく。やはり、この戦いのセンスは天性のものなのだろう。  美羽も夢人も、ただ敵を倒していく。  私は周りの敵をほぼ倒して追い払うと、萌香を助けようと駆け寄ったが、萌香に止められてしまった。 「来ないで!これは、私と恭介の戦いだから」 「やっぱ、プライドだけは高いな。でも、それがどこまで続くかな?」  そういいながら、恭介は休む暇も与えずにただ攻撃を繰り返していた。  少しずつ、でも確実に傷を負う萌香。 「ああっ!」  萌香が痛みで叫んだ。  しつこい恭介の攻撃が、ついに腕に直撃してしまったのだ。 「これで……終わりだ!!」  ここぞとばかりに恭介が長くて鋭い重剣を振り下ろした。  次の瞬間、私は目を疑った。  萌香は恭介の攻撃を真正面から食らい、同時に恭介の腹に自分の剣を差し込んだのだ。  あれだけ隙のある攻撃なら、簡単にかわせたはずなのに……。 「何で……?」  私が呟くと、萌香はわずかに微笑みを浮かべた。 「もう、いいのよ……。  私は、ずっと、恭介の事を、愛してるんだから……。  一緒に、逝きたいのよ」  そういって、萌香は弱々しく恭介の手を握った。  恭介は、自分に起きた事に呆然としながらも、萌香の手を強く握り返していた。 「萌香……なんで……私は……」 「真衣。お願いだから、この星を、ちゃんとしてね?  私は、もう、見られない……か………ら……………」  萌香がその言葉を言い終えると同時に、その首ががくっと下がり、そのまま動かなくなった。 「萌香!?」  こうして、萌香と恭介は、ともに、この世を去っていった──。 「ああっ!!」  私が呆然としていると、突然夢人が大声を上げた。 「何!?」  美羽が驚いて聞く。 「あれは誰だ!?」 「え、めぐみの事?」 「嘘だろ!?」 「こんなんで嘘つく必要がないじゃない」  夢人のあまりの驚きように、私も美羽もびっくりしていた。  めぐみ、という名前がそんなに珍しいのだろうか。 「夢人、めぐみの事知ってるの?」 「知ってるも何も……!!」  ちょうどそのとき、めぐみが、少ない兵士の生き残りを始末してこちらにやってきた。  その途中で、突然めぐみは固まった。 「あああああっ!」  めぐみが頭を抱え、うずくまった。 「どうしたの……2人とも……」 「思い出したのよ……」  めぐみが呟いた。 「……夢人は………私の……兄だって…………」 ...

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フラワー・ストーリー‐本編 14年前

フラワー・ストーリー 第43章

願いの塔は、本当に花びら伝説のためだけに生まれたような魔境で、5つの花びらを持っていないと最上階には入る事すらできない。 「ここが、最後の魔境、よね……」  雲を突き抜けるような高さでそびえ立つ最後の魔境は、一点の汚れもない真っ白な壁でできていた。 「ここまで汚れが無いのって、不自然なんじゃない?」 「それだけ、花びらの魔力は計り知れないんだろうよ」  萌香がそう呟くと、夢人が答えた。  私たちがいよいよ願いの塔に入ろうとした所で、突然物音がした。 「なんだ!?」  それは、大群の足音のようだった。  よく見ると、それは──。 「地球人の兵士!」  誰が合図をするわけでもなく、戦いは始まった。  50人ほどいたので、相手が上級の戦士であれば私たちは瞬時にやられていただろう。  ただ、相手がそれほど強くなかった事が幸いして、何とか私たちは太刀打ちできていた。  萌香は、10人ほどの敵を相手に、私たちを狙わないよう注意しながら発砲して攻撃していた。  その速さと命中率はとても高く、私は一瞬見とれてしまった。  美羽と夢人はコンビを組んで、お互いに背中合わせになって敵を次々と倒している。  私も父の形見である長いサーベルを使って何とか敵を薙ぎ倒していった。  そして敵を何とか全滅させ、ようやく入ろうとした。  ところが、またも敵が現れた。  今度の敵は3人だったが、どれも強そうだ。  ところが、その後ろから、もう1人出てきた。  それは、見覚えのある顔で、私は愕然とした。  しかし、やはり一番最初に反応したのは、萌香だった。 「恭介……?」 「驚いたか?おれが、逝ってなくて」 「でも、私は確かに刺したはずじゃ……」 「お前には、気の迷いがあったし、すぐに発見されて、応急措置を受けた。  そのおかげで、何とか一命は取り留めた。  深い傷は負ったがな」 「こいつ、誰だ?」  夢人が美羽に小声で尋ねた。 「萌香の元カレで、真衣の両親とかをころした兵士」  美羽が簡潔に答える。  簡潔すぎてちょっと傷つくんだけど……。 「でも、また会えてよかったわ。  今度こそ、本気で戦えるんだもの!」  そういって、萌香が恭介の元へと駆け出した。  本当の戦いの火ぶたが、いよいよ切って落とされた。  萌香と恭介は互角だったけど、私たち3人は押されていた。  精鋭の3人だったのだろう、美羽も夢人も苦戦していた。  私は、何とかサーベルとナイフを駆使して攻撃を防ぐのが精一杯で、反撃の糸口も掴めなかった。  そのうち、相手の鋭くて強力な一撃がナイフに直撃し、ナイフが吹き飛ばされた。 「あっ!」  驚いて油断した隙に、サーベルも飛ばされてしまった。 「これで、おれの勝ちだな」  敵が、にやりとして、私にじりじりと迫ってきた。  私はゆっくりと引き下がるが、逃げられる可能性は少ないだろう……。  そう思った瞬間、突然相手は目を大きく見開いて、前のめりに倒れた。  背中には、飛ばされたはずのナイフが突き刺さっている。 「うそ!?」  美羽も夢人も萌香も、助けてくれた様子はない。  では、誰が……。 「はぁい。久しぶりね、真衣」  聞き覚えのある声……。  それは、めぐみだった。 ...

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フラワー・ストーリー‐本編 14年前

フラワー・ストーリー 第42章

「久しぶりね、ここ」  今、私たちはドリームウィング本部に来ていた。  近くに来た事は何回かあったが、結局一度もここに戻ってこなかった。 「夢人、どうしてるかな?」  そんな事を話しながら、私と美羽、それに萌香が本部に入った。 「えーと、あなたは……あ!!」 「そう、美羽よ。夢人はどこ?」 「夢人様なら、ご自分のお部屋に……」 「わかったわ、ありがとう」  そういうと、美羽はさっさと行ってしまった。  私は呆気に取られる萌香の手を引いて、美羽を追いかけた。 「ああ、美羽か。あのさ……」 「花びらなら、もうすぐ集まるわよ、あと1枚で」 「そうか。ところで……」 「ああ、最後の魔境なら願いの塔でしょ?花びらが5枚ないと入れない、最後の魔境」 「そうだな。それより……」 「夢人も行く?」 「……いい加減空気を読め!」 「ふえ?」 「突然天然ぶるな!この人は誰だ?」 「ああ、なんだそんな事?」 「気づけよ!」 「春野萌香さんよ、地球人の」 「……え?」  最後の言葉に、夢人は疑問を浮かべた。 「時間が無いから後にしてよ。詳しい事は……」 「何?」 「Our Story's Worldで検索すれば……」 「……殴られたいのか?」 「ま、冗談はこのくらいにして……地球人の計画の事、聞いてる?」 「いや、知らない……何だ?」 「20日後にアーチ人を全員抹殺する計画」 「おいおい……嘘だろ?」  あまりに突拍子なので、夢人は信じなかった。 「本当よ。嘘だと思うなら萌香に確認してよ」 「いや、いい……でも、だったら時間が無いな……。  作戦の拠点はどこなんだ?そこに攻め入るしかないだろ」  夢人がそういうと、美羽は驚いたような顔をした。 「何で?願いの塔に行って花びらを集めれば済む話じゃない」 「そうか!  あと1枚で集まるんだな?  だったら、ぼくも美羽たちと一緒に願いの塔へ行くよ」 「私も行かせてくれない?」  夢人がそう決断すると、萌香が続いた。 「どうせなら、私も真衣たちと運命を共にしたい……そう思うの」 「わかったわ。  最後くらい、みんなで行きましょう。  地球人とアーチ人の戦いに、いよいよ決着を付ける時だもんね」  私たちはそれぞれの想いを胸に、お互いに手を重ねた。  目指すは最後の魔境、願いの塔だ。 ...

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フラワー・ストーリー‐本編 14年前

フラワー・ストーリー 第41章

隼人が、死んだ?  稔が、私の兄?  理解できない、いや理解したくない現実を前に、私の思考はストップした。 「さて、そろそろ昔話も終わった所で、殺しにかかるか──」 「ふざけるんじゃないわよ」  萌香が恭介の言葉を遮って言った。 「この子の全てを破壊し尽くして、それでもまだあなたは地球人のやった行動が正しかったと思うの?」 「ああ。俺たちの取った行動は、間違っていなかった」  それを聞くと、萌香はふうっ、と諦めに似たようなため息をついた。 「なら、情けはいらないわね?」  そういうと同時に、萌香は目にも止まらぬ速さで恭介に近づくと、何の躊躇いもなく恭介をナイフで刺した。  恭介は何の反応もできないまま、腹を赤く染めて倒れた。 「さあ、行きましょう。  こいつを倒した以上、私はもう……こっち側には戻れないし」  父の遺体を運ぶと見つかりやすいので、やむなく私たちは父を置き去りにする事にした。 「これから、どうするつもり?」  萌香が、私たちに尋ねた。 「とりあえず、ドリームウィングの本部に戻って、夢人と相談するわ」 「わかった。なら、私も一緒に行かせてくれない?」 「いいけど……くれぐれも地球人だって事は秘密にしといてね?夢人なら大丈夫だけど」 「いいわ。じゃあ、急いで行きましょう。もう時間が無いわ」 「何で?」 「あら、知らないの!?」  萌香が驚いたように言った。 「うん……」 「まあ、仕方ないわね……極秘事項だったし。  地球人は、ちょうど20日後に、アーチ人をほぼ全員まっさつして、完全にここを地球人のものにする計画を立てているのよ?」 「え……嘘でしょ……」  私たちの知らないところで、最終決戦は、刻一刻と迫っていた──。 ...

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