『スーパーボンバーマンR』の1周年に寄せた感想の書き直し
ちょうど1年前の2017年3月3日に発売されたゲーム機「Nintendo Switch」の、2本しかなかった独占ローンチタイトルのうちの1本、『スーパーボンバーマンR』。(現在はPS4 / Xbox One / Steamに移植され、独占ではなくなりましたが) ハドソンがコナミに買収されて以降途絶えていたボンバーマンシリーズの久々のコンシューマー向け新作にして、 「スーパーボンバーマン」というタイトル、凶悪ボンバー5人衆の復帰など、往年の、特にスーファミ時代のシリーズファンを惹きつける要素満載のタイトル。 そして、発売当初の不満点やバグ、ボリュームの少なさなどを、半年以上に渡る継続的かつ熱心なアップデートによってほぼ完全に解消したにも関わらず、そのことがあまり認知されていない不遇のソフトでもあります。 このソフトについて、発売2週間後に書いた記事が、ありがたいことに未だにそこそこ読まれております。 しかし、この記事はその後の度重なるアップデートを経て、内容が一致していないものとなってしまいました。 あまりにも内容が変わりすぎて、ちょっとした訂正では最早追いつきようがないほどに全てがズレてしまったこの記事を、書き直すくらいならイチからもう一度語ってしまおう、ということで、 この1周年に合わせてもう一度記事を書くことにしました。 前半がレビュー、後半が個人的な感想です。 ※2018/8/15 他機種版発売に触れつつ一部推敲しました。 --------------------
レビュー
ストーリーモード
今作のメインともいえるストーリーモード。 ストーリーモードはアップデートでそこまで大きく変化しておらず、上記の記事から変わった点と言えばマップの向きを正面に固定できるようになったこと、スロープが見やすくなったこと程度でしょうか。 難易度は明らかに高いですが、「イージー・ノーマル・エキスパート」から難易度を選べるので初心者お断りというわけではありません。 その一方、エキスパートで星3つを目指すのは、最近のゲームではあまり見ないほどの高難度。敵AIの頭の良さはある意味で原点回帰しています。 理不尽な仕掛けのステージもところどころありますが、2Dアクションであるシステム上、「なぜ死んだのかわからない」ということはあまりないので、リプレイバリューも高く、1人でも十分に遊べるゲームだと断言できます。 今作は久々にストーリーモードだけでも楽しめる作品になっていますし、それがアプデ前でも「買う価値がある」と言っていた理由でもあります。 『ボンバーマンDS』などではストーリーモードがオマケとなりましたが、元々スーファミ時代の『スーパーボンバーマン』は、対戦モードをオマケと捉えるくらいでちょうどいいソフトでした。 ところが、「1-1から最終面までぶっ通しでプレイ」を前提とし、「一度でも死ぬと持っていたアイテムを全て失う」という緊張感が醍醐味だったボンバーマンのストーリーモードは、 こまめにセーブできるのが当たり前になったDS・Wiiでは明らかに破綻していました。 死んでもアイテムが失われないなら緊張感もないし、途中でセーブできるなら死んだらリロードすればいい、かといって面の途中でセーブできないなんて前時代的な作りは許されない。 このジレンマを、「1つのワールドごとにアイテムは全てリセット」「何度ミスしてもアイテムは失われないが、1度でも死ぬとクリア後に貰える報酬が大きく減る」という調整によって現代に適応させたことが、今作の最大の評価点でしょう。 『ドンキーコングリターンズ』が、旧ドンキーシリーズの高難度という醍醐味を変えることなく、「すぐに死ぬけど残機を増やすのも異常に簡単」というアイデアで解決したように。 手に汗握るストーリーモードの難しさは、遊んでいて「これこそが私の求めていたスーパーボンバーマンだ!」と思うに十分なものでしたし、このモードの難易度の高さのおかげで、私はこれを『スパボン6』と呼んで良いと思いました。バトルモード
ボンバーマンシリーズの原点にして一番面白い対戦。Joy-Conで1台8人まで遊べる強みは、『マリオカート8デラックス』が出た今となってはやや優先度が下がってしまいましたが、それでもオススメできるゲームであることに変わりありません。 『スーパーボンバーマンR』のバトルモードは、発売直後は「CPの強さを選べず常に最強」「ステージが少ない」などの問題を抱えていました。 その後のアップデートでCPの強さを選べるオプションが追加され、ステージもアップデートのたびに増えていきました。過去作定番の「ギンギンパワー」「イダテン」も追加されています。 スーファミ以降のシリーズで導入された特殊ルール「パネル」「クラウン」などは最後まで追加されませんでしたが、それでもステージ数は多く、十分に楽しめる作品には仕上がっています。 現在でも解消されないままの不満と言えば、1試合ごとにステージが変わるステージランダム設定がないこと、CPに特殊能力持ちボンバーを割り当てられないことくらいでしょうか。特殊能力オプション
今作のバトルモードに搭載された、Bボタン(1)今作は「リモコンボム」がないので空いているで各ボンバーに割り当てられた能力を発動できるようにするオプション。 このオプションの存在だけで、過去作から削除された数々のルールを補って余りあるほどに『ボンバーマンR』を魅力的な傑作に仕上げています。 マグネットボム、ゴーレムボムといった特殊ボムは「ストーリーモードで敵が使う能力」として『スーパーボンバーマン2』から存在していましたが、これが正式に対戦モードで使えたシリーズはありませんでした(2)『スパボン4』のバトルモードでは特殊能力を使えたような気もしますがよく覚えていません。 全員が同じボムを使うというのは確かに公平でシンプルですが、一方で単調になりがちな部分もありました。この特殊能力によって、各プレイヤーが個性を出して戦うことができますし、チート気味な「ピラミッドヘッドボンバー」や扱いやすい「マグネットボンバー」を初心者に使わせることでバランスを取ることもできます。 その後、コナミIPとコラボして追加されたキャラクターたちは、もはやボムに拘らない能力を持っていますが、ピラミッドヘッドで触れた瞬間に死なせる、などといったハチャメチャな能力の数々がありながらもゲーム自体は破綻していません。ボンバーマンというフォーマットの完成度の高さと懐の広さを感じさせるモードでもあります。グランプリモード
2017年11月に「Ver 2.0」として追加された新モード。3vs3のチーム戦で、特殊能力だけでなくボンバーごとに「初期能力」と「能力上限」が決められています。火力や爆弾を置ける数が制限されており、特殊能力を持った「ピラミッドヘッドボンバー」などはアイテムを取ってもほとんどパワーアップできない、というバランス調整がされています。 クリスタルを集めるモードでは、死ぬと持っているクリスタルの半分を周囲にばらまき、一定時間経過後に復活します『マリオカート』のコインバトルと言えばわかりやすいでしょうか。 このルールは最後まで逆転のチャンスがあり、自爆覚悟で突っ込んで相手のクリスタルを落とさせるなどの戦い方で初心者でも貢献できるので、パーティーゲームとしても十分に楽しめます。 『Splatoon』を参考にしたと思われるこのルール(3)バトル開始時の演出が明らかにスプラトゥーンは、進化の袋小路に入っていた『ボンバーマン』の新たな可能性を示したと言えるでしょう。 唯一の難点は、人が少なすぎて6人もマッチングしないこと、なぜかこのモードではCPUがポンコツすぎること。グランプリモードに適したAIを用意できなかったのでしょうか。個人的な感想
アップデート前のスパボンRはクソゲーだった?
『スーパーボンバーマンR』の発売直後の出来は、お世辞にも良いものとは言えませんでした。UnityとSwitchの初期の相性の悪さ、開発期間の短さなど様々な問題が絡んでいたと思われますが。 「オンラインでの酷すぎる操作遅延」「難易度の調整不足」「ステージの2.5D化に伴う過去作との操作性の変化」が特に叩かれていたと思います。あ、あとヘキサ日記でのビッグマウス。 [Unite]Nintendo Switchのローンチに通信対戦ゲームをリリースする!「スーパーボンバーマンR」の挑戦 - GamesIndustry.biz Japan Edition 開発における苦労は後日公開されましたが、 そもそも「ローンチタイトルに移植ではない独占新作を持ってきたメーカーはコナミしかいなかった」という本来なら評価される点が、 比較対象が移植ソフトと任天堂ソフトしかない(当然バグは出にくいに決まっている)、という最悪な環境を作り出してしまったのも大きかったのではないでしょうか。 そもそもボンバーマンシリーズは昔からそんなに出来の良い作品ではなかったと思います。『スーパードンキーコング2』や『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のように評価され続ける作品があるわけでもありませんし。 「コナミになって悪くなった」という方向に持っていきたい気持ちが先走りすぎて、デマに近いものもたくさん流れていました。ところが今作ではボム持ったまま移動できないという仕様なのです。公式ブログでスーファミ版を研究し尽くした、というのがどういう意味か分かんないですよね、、、— 嶽花 征樹 (@takehana_masaki) 2017年3月21日この人(4)しかも今見たらブロックされてた……とか、私がリプライで突っ込んだら、セガサターン版しかやってなくて勘違いしてたらしいです。スーファミ版研究してないのはどっちだよ、という……。 そんな中で、「オンラインはともかく、オフラインに関してはそこまで叩かれる出来ではない」ということを知ってもらいたかった、ということが、私が1年前に記事を書いた理由でした。 Joy-Conがスティック操作を基本としているために操作性が変わるのは当たり前。 高難度な調整は、DS・Wiiのストーリーモードのつまらなさを経験していれば、むしろ往年のスパボンファンにとっては喜ばしいこと。 従って、オフライン部分に関してはボンバーマンRは十分に名作と言える、悪評を理由に買わないと決めるのは早計だ、と結論付けました。 しかし、その後のアップデートで、操作感は再調整され、ストーリーモードのカメラ角度といった問題は改善され、オンライン対戦もまともに遊べるようになりました。 「大したことない」と擁護した問題点はそもそもなくなりました。 だからといって「アプデ前のボンバーマンがクソゲーだった」とは私は今でも一切思っていません。
スパボン以降のシリーズで当たり前になった要素の多くが当たり前のようにオミットされ、最近のゲームの定番に逆行したハードな難易度のストーリーモードが襲いかかり、一度ステージを選択するとリタイアする方法が自滅を繰り返すしかないなどの不親切な仕様がそこら中に転がっています。 いくら開発側が「スーパーファミコンの5作を」元に作ったと言っても、これが『スーパーボンバーマン6』として1998年に発売されていたならともかく、2017年にシリーズ最新作としてNintendo Switch向けに出た以上は、手放しに絶賛することは不可能です。 しかし、それを理由にクソゲー認定されてしまったり、「ボンバーマンというIPをダメにした」とまで言われてしまうのは、ちょっとアンフェアではないか、とも思うのです。...